文化

コロナ世代、映画で闘う 映画『突然失礼致します!』

2020.10.01

全国の大学生が制作したオムニバス映画『突然失礼致します!』が話題となっている。コロナ禍における課外活動自粛の中で、映像に携わる全国の大学生が、屋内での三密を回避しながら撮影した。京大からはKUBS京都大学放送局と雪だるまプロが参加している。

企画の発案者で、製作総指揮を務めるのは、群馬大学社会情報学部4年生の熊谷宏彰さんだ。昨年10月に映画部「MEMENTO」を結成したものの、なかなか撮影の機会には恵まれなかった。そのような中で、コロナ禍によって課外活動の自粛を余儀なくされ、「撮りたいけれど撮れない」という思いを強く抱くようになった。同時に体調不良になり、自宅待機をする中で、その後悔ともいえる思いは募っていったという。

体調が回復しても、「撮りたい」という気持ちは変わらなかった。そこで、熊谷さんは、まず、他の大学が自粛期間に何をしているのかを探ろうと、関東の大学の映画部いくつかに声をかけ、オンライン交流会を開いた。呼びかけには、TwitterのDM(ダイレクトメッセージ)を用いたが、DMを送れば来てもらえる、ということを学んだという。また、どこの映画部も「撮りたいけれど撮れない」という思いを抱いていた。

それを知った熊谷さんは、東日本に範囲を広げ、各大学の映画部にDMを送り、再び交流会を開いた。今度は30~40ほどの映画部から人が集まった。そこで、このメンバーで1本の映画を撮ることができるのではないかと思い、交流会の中で提案した。否定の意見はなく、多くの団体が賛同の声をあげた。そこで自信を得た熊谷さんは、次の日には西日本の大学の映画部に次々とDMを送り、再び交流会を開いた。そこでも映画を撮ることへの賛同の声が多かった。こうして、全国の大学生を巻き込んだ映像作品作りは始まった。

この企画を立ち上げるにあたり、熊谷さんにはもう一つの動機があった。熊谷さんは映画を大衆娯楽であると考えており、できる限り多くの人に鑑賞してもらうことを目指して動いていかなければならないと感じていた。また、サブスクリプション台頭の流れはコロナ禍において加速し、映画のあり方が大きく変わっていく中で、日本から若手の監督が出ていける土壌の整備が必要であるとも感じていた。学生映画は、賞の獲得を目的に動いている団体が多く、社会にはあまり開かれていないと考えていた熊谷さんは、今回の企画で、学生映画を社会に極限まで開いたものにすることを目指した。

企画が始動し、当初は作品を見てもらえないのではなどの不安もあったが、8月にYouTubeにアップロードした仮完成版と9月にアップロードした完成版を合わせ、2万回以上再生された。

熊谷さんは今後について、より多くの人に取り組み・作品を知ってもらうため、全国ネットの報道機関での広報などを視野に活動しているという。また、来年には京都・大阪のミニシアターでの公開を視野に入れており、そのための資金集めとしてクラウドファンディングを実施し、最終的に110万円を集めた。

映画『突然失礼致します!』は現在YouTube上で公開中。また、ミニシアターでの公開にあたり、上映時間の関係で一部の作品をカットする必要があり、そのための人気投票を実施している。人気投票へはYouTubeの概要欄から参加することができる。

◆次号では、京大の団体が制作した映像作品を特集する。