『京都学派の源流』触れて OCWで西田幾多郎企画(2008.05.01)

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1913年から28年まで京都帝国大学教授を務め、いわゆる「京都学派」の基礎を築いた西田幾多郎氏の手書き原稿・書・書簡などがこのほど、京大オープンコースウェア(OCW)ホームページにて公開された。

今回公開された手書き原稿(写真)は、38年の第1回「月曜講義」にて氏が「日本文化の問題」と題して行った連続講演の内容をもとにして執筆されたもの。「西田用紙」とよばれた250字詰め原稿用紙で257ページに及ぶ。西田氏没後、遺族から京大文学部図書館に寄贈され、現在も同図書館が保存している。40年に岩波新書から同名の新書が出版されたが、現在は絶版となっており、購入することができない(文学部図書館では貸出可)。月曜講義は、当時学生課が企画して毎週月曜日に行っていた公開講演で、現在も「春秋講義」の名で引き継がれている。

記者説明に臨んだ藤田正勝・文学研究科教授は、「手書き原稿ということで書き直しなども残っており、西田の思考過程が見出せるという点で貴重であるし、書などからは、個人としての『西田幾多郎』の人物像が偲ばれる」と、今回の企画の重要性を訴えた。

OCWは、学術情報メディアセンターが中心となって、京大で行われている講義の教材などをウェブで公開し、知的財産の蓄積というかたちで社会に貢献することを目的としている。2月に湯川秀樹教授の企画を行ったあと、次の対象にあがったのが、西田幾多郎氏であった。3月にメディアセンター側から藤田教授に直接はたらきかけ、文学部図書館・石川県西田幾多郎記念哲学館・岩波書店の協力も得て、今回の公開に至った。

次の企画予定について、学術情報メディアセンターの土佐尚子教授は、「今回をはずみとして、和辻哲郎氏など京都学派の方々を取り上げたい。さらには、物理学・哲学ときたのだから他の分野の方々も対象としていきたい」と述べた。

京都大学OCWホームページ:http://ocw.kyoto-u.ac.jp/jp/

西田幾多郎『日本文化の問題』を読む


以下、同時にアップされた藤田教授の解説に基づいて、『日本文化の問題』に見られる西田の思想を垣間見てみる。 当時日本は、1937年におきた盧溝橋事件により、戦争一色の時代へとむかって走り始め、軍部による学問・思想の統制が厳しくなりつつあった。

同原稿の中で西田は、過去にとらわれ内部に閉じこもり、日本精神の唯一性・優秀性をただただ宣揚する態度を批判し、「自家用の文化ではいけない。自ら世界的な文化を造り出さなければならぬ」と訴え、明確な批判対象はいわないものの、当時の国粋主義者などの態度をつっぱねている。

ここに世界の文化が互いに創造的な影響を与え合い人間の文化を豊かにしていくべき、という、晩年の西田が辿り着いた多文化主義的な思想の一端が垣間見られる。現代でも取りざたされる、行き過ぎたナショナリズムによる偏狭な保守的態度。国同士が今までにない頻度で関わり合うようになり、文字通り世界的なネットワークが形成されんとしていた時代に、西田はいち早くその危険な事態を察知し、若者たちへ警鐘を鳴らした。

しかし、その思いもむなしく、西田の死んだ翌年の1941年から戦争は世界各地に広まり、日本は壊滅的被害をうけるに至る。その時代のことなど知るべくもない私だが、西田の思想に耳を傾け、深く理解を示す者がもっといてくれたなら、と思わずにはいられない。(義)

《本紙に写真掲載》

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