〈映画評〉ただ純粋にロックンロール 『音楽』(2020.04.01)

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俳優としても知られる大橋裕之による漫画『音楽と漫画』を、岩井澤健治監督がアニメ化した作品。4万枚以上の作画を手書きするという、CG制作などが主流となっているアニメ界の流れに逆行する方法で、7年もの期間を経て完成された。主役の不良たちのように、ある意味パンク的に感じる作品である。

不良として有名な研二(坂本慎太郎)は、偶然ベースギターを手に入れる。そこで、不良仲間の太田(前野朋哉)、朝倉(芹澤興人)を誘い、思いつきでバンド「古武術」を結成し、町の音楽フェスに出場することを目指す。

本作の一番の特徴は、実写映像の動きをトレースする「ロトスコープ」という手法が用いられていることだろう。全体的に陰影がなくのっぺりとした、まさに原作漫画の独特な絵柄が反映された表現で描かれている登場人物が、まるで実写のように滑らかに動くのはこの手法によるもの。精巧に描きこまれた背景をバックに、言うなればリアルに描かれていない登場人物たちが動く絵面は、昨今のアニメ作品にはない目新しいものとなっている。

もちろん、本作のクライマックスにあたる音楽フェスのシーンでも、この手法は用いられている。監督のこだわりにより、ステージが組まれ、観客を動員した上で実際にライブが敢行された。その映像を基に作画が行われたため、リアリティに加え、音楽フェスの熱気も感じることができる場面となっている。

原作者の大橋は、作品のストーリーが映画の尺に耐えうるのかを心配していたようだが、岩井澤監督が原作要素以外に加えた細かな描写や、人物の会話における絶妙な間が生み出すコミカルな空気など、映像だからこそできる笑いを誘う表現により、原作を膨らませつつも、原作の「わかりやすい物語」というテーマを踏襲した、映画作品として見ごたえのある作品となっている。

また、音楽を取り上げている作品であるだけに、監督が尊敬するミュージシャンの作品に対するパロディが随所にちりばめられているのも面白い。例えば、研二がベースギターを叩き折るシーンでは、英パンクバンドのザ・クラッシュによる名盤「ロンドン・コーリング」のアルバムジャケットを模したものになっているなど、知っている人であれば「あっ! これは」と思える場面が用意されているのは、音楽ファンとして非常にうれしい。(湊)

作品情報
制作年:2019年
制作国:日本
上映時間:71分
監督:岩井澤健治
映倫区分:PG12

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