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柿の全ゲノムを解読 植物の性 進化のヒント

2020.04.01

京都大学農学研究科の田尾龍太郎教授、岡山大学の赤木剛士准教授らの研究グループは先月29日、カキ(柿)の近縁野生種であるマメガキの全ゲノム配列の解読に成功したと発表した。本来は両性花を着ける植物が、どのように性別を手に入れたのかを解明する手掛かりになるとみられている。

全ゲノム配列の解読により、カキ属の性決定遺伝子OGIやMeGIは、全ゲノム倍化によって、本来は性に関与していなかった遺伝子から変化したものであることが明らかになった。全ゲノム倍化とは、遺伝情報全体を指すゲノムが2セット以上に増える現象で、倍数化とも呼ばれる。同じ遺伝子が数存在することで、元の機能を維持したまま、別の機能を生み出せる。

カキ属が全ゲノム倍化を起こした時期は、隕石が衝突したことによる気候変動で、恐竜や多くの植物が絶滅した6000~7000万年前と一致している。カキ属以外の種でも同時期に同様の現象が起こっており、自ら移動することが出来ない植物が新しい特徴や性質を手に入れることで生存に成功した可能性があるとみられている。

カキ属植物からは、植物の性別を決定する遺伝子がはじめて発見されており、作物の栽培や品種改良をするうえで重要な「植物の性」を研究する観点から注目が集まっていた。マメガキの全ゲノム情報が得られたことにより、「甘柿と渋柿の違い」といった身近なカキの性質へのゲノム研究からのアプローチも可能になるという。

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