南座に見る新しい観劇スタイル イマーシブシアター『サクラヒメ~「桜姫東文章」より~』(2020.02.16)

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四条京阪にある南座で、1月24日から2月4日にかけて、新しい演劇手法であるイマーシブシアターを用いた『サクラヒメ~「桜姫東文章」より~』が上演された。イマーシブシアターとは、旧来の「観客が客席に座り、舞台上の演者を鑑賞する」という構図を打ち破り、観客が主体的に観劇できるよう工夫が施された「体験型演劇作品」の総称で、2000年代のロンドンを発祥とする。今回の『サクラヒメ』においても、観客が劇の世界に入り込めるようさまざまな工夫が施されていた。

今回の『サクラヒメ』は、歌舞伎『桜姫東文章』から着想を得て、イマーシブシアターとして上演するために書かれたオリジナルストーリーである。意に添わない縁談から逃れるため、心中によって恋愛を成就させたサクラヒメ(純矢ちとせ)は、転生したのちに前世での運命の相手との再会を望む。サクラヒメの出会う5人の魅力的な男性たち、心優しき町医者(Toyotaka)、神秘的な陰陽師(川原一馬)、自由奔放な義賊(「世界」)、巧みな剣術をもつ浪人(荒木健太朗)、火事場での活躍を見せる鳶(平野泰新)。誰がサクラヒメの運命の相手なのか、その結末は観客の投票にゆだねられる。

観客はチケットを購入する段階で、1階の都人のエリアと2・3階の雲上人のエリアを選ぶことができる。都人のエリアは、次々と舞台装置が動き、役者のアクティングスペースとなるほか、観客は用意された羽織を着て劇中の世界の住人として劇に参加することができる。観客のすぐ隣で演者が演技をし、時には演者が観客に声をかけたり、舞台装置の中に導いたりするなど、観客自身が劇に没入できるよう工夫がなされていた。雲上人のエリアは、一般的な客席から観劇する形ではあるものの、演者が客席の間の通路を通って座っている観客に話しかけたり、2階部分から1階部分へ掛けられたはしごを使って1階と2階を行き来したりと、都人のエリアに劣らず主体的に劇に参加できる工夫がなされていた。また、雲上人のエリアの観客は、劇のラストになると、入場時に配布される投票用紙を用いて、雲上の導者(新里宏太)の指示により、サクラヒメの運命の人は誰なのか、という劇の結末を決定することができる。観客自身が劇のストーリーを決定できるというのも今回のイマーシブシアター『サクラヒメ』の大きな魅力である。

今回この『サクラヒメ』が上演された南座は、江戸時代の初期に設立された日本最古の劇場であり、1929年に安土桃山時代風建築として建造され、1996年に国の有形登録文化財となった。弊紙6月16日号でも紹介したように、南座は耐震補強工事を経て、歴史ある外観はそのままに、内装は一新して2018年11月にリニューアルオープンした。
そのような歴史ある南座で、なぜ最新鋭の演劇手法イマーシブシアターを用いた劇が上演されたのか。歌舞伎というと観客の年齢層が高く、若者から関心を集めにくい、という側面がある。南座では、歌舞伎は年齢の高い人に向けられたものだというイメージを崩すため、京都の若年層を客層に取り込もうと試行錯誤を重ねているという。

今回のイマーシブシアター『サクラヒメ』の上演もその一環だ。歌舞伎は長い、わかりにくい、料金が高い、という若者のイメージを払拭するため、『サクラヒメ』は上演時間が1時間15分と短く、また比較的安めの料金設定だ。また、歌舞伎の題材を利用しつつもダンスやアクロバットなどを取り入れたエンターテイメントとなっており、普段歌舞伎を見ないという若者でも気軽に観劇することができる。若者に人気のある俳優が多く起用されていることも、若者を取り込むポイントのひとつだ。実際、会場の中には若者の姿が目立った。南座では今回の『サクラヒメ』に限らず若者向けの作品を多く上演しており、昨年は『新作歌舞伎 NARUTO―ナルト―』が上演された。

伝統芸能である歌舞伎に若者の関心を集めるのは難しいが、『サクラヒメ』のような若者でも楽しめる作品の上演が、今後、南座に多くの若者が来場する足掛かりになることは間違いないだろう。(濁)

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