文化

〈映画評〉進化した映像で恐怖は進化したか 「IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。」

2020.01.16

スティーブン・キングの小説を映画化し、ホラー映画として大ヒットを記録した『IT/イット ″それ〟が見えたら、終わり。』の続編であり完結編。前作から27年後を舞台に、前作にて子供を襲う化物「ペニーワイズ」を退治した「ルーザーズ・クラブ」の面々と、復活したペニーワイズが再び対決する姿を描く。

ルーザーズの面々は大人となり、表面的には成功したように見えても過去のトラウマを忘れているだけで、少年時代の恐怖を克服していない。そんな彼らが再会を果たし、失くした記憶を取り戻して行く様は、前作同様ホラーでありつつもノスタルジックな大人の青春物語が作品の根底にあることを感じさせる。ちなみに、映画冒頭の悲劇がルーザーズのとある一人のトラウマとリンクしているのが、非常に巧妙な仕掛けである。

上映時間が169分とホラー映画にしてはかなり長編だが、ホラーが苦手な人間としては長さを気にすることなく楽しめた。しかし、「BGMが消える→恐怖演出」というホラーでお約束の構成を見せられ続けては慣れてしまうのも事実。また、本作の恐怖の象徴であるピエロ姿のペニーワイズが、視覚効果で描かれる化物の陰に隠れてしまっているのも評価の分かれ目か。ただ、90年版の映像化では成しえなかった表現を可能にした視覚効果が本作の強みであることは間違いない。特に名作ホラー映画のオマージュ(『遊星からの物体X』など)が秀逸であった。

壮大な原作を映画化するにあたり、細かな枝葉を割愛して映像化したために、原作ほど重厚な物語として描けていないと思うファンの意見もあるが、原作者のキングはカメオ出演を果たしているほどであるから、本作を一つの作品として評価していると思われる。彼がルーザーズ・クラブのリーダーであるビル(キング自身を反映したキャラで作家として活躍している設定)に対し、「お前の本は結末が嫌いだ」と話す自虐ネタを披露してくれるのは、本作の笑いどころの一つかも。(湊)

制作年:2019
製作国:アメリカ
原題:It: Chapter Two
上映時間:169分
監督:アンディ・ムスキエティ
映倫区分:R15+

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