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吉田寮訴訟 老朽化「大学が修繕怠り」 寮生側が主張 第3回弁論

2020.01.16

京大当局が吉田寮現棟の明け渡しを求めて寮生20人を提訴した問題で、昨年12月26日、第3回口頭弁論が京都地裁で開かれ、原告・京大の準備書面に対して被告・寮生の弁護士が反論した。現棟の老朽化の原因は大学が補修を行わなかったことにあると指摘し、老朽化を根拠に建物の明け渡しを求めることは「権利の濫用」だと批判した。第4回口頭弁論は3月11日、京都地裁で行われる。

裁判には、被告側から寮生と弁護団の計19人、原告の京大からは代理人の弁護士5人が出席した。提出書類の確認後、寮生の代理人の弁護士が準備書面について説明した。弁護士は、原告が老朽化による倒壊の危険性を根拠に現棟の明け渡しを求めていることについて、まず、直ちに明け渡すことが必要なほど朽廃していないと主張した。原告は2005年と2012年の耐震診断を根拠に現棟には倒壊の危険があるとしている。これに対し被告側の弁護士は、原告の示した診断報告書の中に「補修が行われれば継続使用可能」との判断が記されており、退去を求める法的根拠はないと反論した。

被告側の弁護士は続けて、仮に現棟の朽廃が認められるとしても、その原因は大学の不十分な管理にあると指摘した。2012年に寮自治会と赤松明彦副学長(当時)が現棟を補修する方向性で合意して確約書を結んだにもかかわらず、その後大学は明確な根拠を示さずに補修の方針を撤回し現在に至ったと説明した。弁護士は、大学が修繕義務を果たさなかったことが朽廃の原因であるとし、老朽化を根拠に明け渡しを求めることは「権利の濫用だ」と批判した。

原告・京大はこの日、口頭での弁論は行わなかった。提出した書面の中で京大は寮自治会との確約書について、学内で正式に決裁していないため無効と主張している。また、現棟の修繕義務を怠ったとの指摘については本紙の取材に対し「係争中の案件に関わるため答えかねる」とした。このほか京大は寮生に退去を求める法的な根拠として、建物の老朽化以外に、被告が「大学の要請に反して入寮募集をした」、「学外者を入居させた」などと主張しており、次回以降の弁論に向けた準備書面で、退去を要求する法的根拠などを整理して説明すると見られる。

裁判当日、京都地裁入り口前では開廷の約1時間前から抽選用の整理券が配布された。86人の傍聴席に対し、約150人の傍聴希望者が列を作った。終了後には、吉田寮自治会が京都市子育て支援総合センターこどもみらい館で報告集会を開き、傍聴できなかった学生や市民ら100人以上が参加した。弁護士が弁論での主張を改めて説明したほか、文学研究科の伊勢田哲治准教授や人間環境学研究科の細見和之教授が登壇した。

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