企画

ラグビー観戦に行こう!

2019.10.01

「○○の秋」特集 スポーツ編

秋は、「○○の秋」という表現が用いられる。これには、「秋に入って過ごしやすくなったから○○でもやってみよう」という意味が込められているだろう。そこで、今号から、「○○の秋」をテーマにした特集を組むことにした。読書の皆様がなじみのないことをやってみるきっかけにしていただければ幸いである。

「○○の秋」特集、初回の○○は、スポーツを選んだ。競技はラグビーだ。9月20日から、ラグビーワールドカップが開催されている。日本で行なわれているため、海外での試合に比べると現地観戦がしやすく、テレビなどでの視聴もしやすい時間帯に試合が行われる。スポーツの秋に、普段ラグビーを見ない人が楽しむにはうってつけの機会と言える。そこで、ラグビー観戦初心者の編集員が、ラグビーの楽しみ方を取材し、実際に観戦に行ってみた。(村)

京大ラグビー部に聞く ラグビーの楽しみ方

ラグビーになじみのない人にとっては、「ルールが難しい」、「何が起こっているか分からない」といったイメージが、観戦のハードルとなっている。そこで、知っておくべきルールやラグビー観戦に際しての注目ポイントについて、京大ラグビー部の部員に話を聞いた。

ボールの位置で戦況を見る!

まず、ボールの場所に注目するとよいという。ボールがどこにあるのかを見ることは当然と言えば当然だ。ただ、ラグビーでは、ボールより前(攻撃方向)にいる人はプレーに関与できないというルールがあり、ボールの位置が選手の動きを決める基準となっている。また、得点を奪うためには、列をなして相手陣地に押し込み、ボールを前に運んでいくことが重要となる。そのため、どこにボールがあるかを見ることで、形勢を把握することができるのである。ボールを保持していても、その場所が自陣であれば不利とさえ言える。このような視点で、戦況をとらえるとよい。

制約がある中での工夫!

ボールを前に投げてはならないため、▼横より後ろに投げる▼前方に蹴る▼持ったまま前に進むのいずれかでボールを運ぶ必要がある。ボールより前に味方がいないにもかかわらずボールを前方に蹴ることは、相手に渡すことに等しい。それでも、ボールを前に運んで相手守備陣に圧力をかけるという狙いのもとでは、キックが有効となる。

タックルで始まる奪い合い!

次に教わったのは、ラックである。タックルを受けて倒れた選手はボールを放さなければならないというルールがある。手放されたボールを奪おうとする選手と、阻止してボールを保持しようとする選手がぶつかり合うと、ラックが成立する。ラックの中では手を使ってはならず、押し合いに勝たなければならない。タックルの瞬間から、ボールの奪い合いに注目だ。
ぶつかりあいとしては、スクラムも注目だという。ボールの位置を少しでも前にするために、力自慢の精鋭がぶつかり合う。機を見て攻撃側がボール回しを再開する。1㌢1㍍でも押し込むことが重要になるため、その攻防は目が離せない。

背番号で分かる選手の特長!

ラグビーでは、背番号ごとにポジションが決まっている。一番外に構え、スピードに乗ってトライを決めるウイング(11・14)、強靭な肉体で相手の攻撃を最前線で止めるフッカー(2)、中盤でキックやパスによって攻撃を司るスタンドオフ(10)、総合的な能力が求められるナンバーエイト(8)など、各ポジションの役割は多様である。番号を追いかけて見ることで、選手の特長が把握しやすく、各ポジションの駆け引きも楽しめるのだという。

ワールドカップ観戦記

《チケットを買う》

今回私は、9月22日に行われたイタリア対ナミビアの試合の観戦に行った。日本代表の試合よりチケットがとりやすく、会場が、京大から一番近くて日本ラグビーの聖地、花園ラグビー場だったからだ。

チケットの購入には、まず、メールアドレスとパスワードを登録してIDを取得する。次に、公式サイトから購入ページにログインし、在庫を確認する。試合の1週間ほど前に確認したところ、お手頃な価格の席が在庫切れとなっており、最安値が1万円だった。サッカーが趣味の私は、サッカー観戦でも払ったことのない額を前にして購入をためらった。チケットが取れなかった場合の観戦方法を調べ、後述する楽しみ方を見つけたため、そちらにしようかと気持ちが傾いた。しかし、後日もう一度確認すると、6千円のチケットの在庫が復活していた。1万円よりはましだ、とすぐに枚数1を入力して次へ進もうとしたが、「買い物かごに入りません」の表示が出る。何度か試したが、購入画面に進めなかった。公式サイトの説明によると、他の人が購入を保留にしている分があることなどが原因だという。観戦に行ってみようという趣旨の今回の企画で、チケットが取れない……。頓挫が見えてきた。しかし、日を改めてログインすると、最安値3千円のチケットが復活していた。今度は1回で購入画面に移動でき、チケットの確保に成功した。

《花園へ》

出町柳駅から京阪電車に45分ほど乗り、京橋駅でJR環状線に乗り換える。目的のホームまで思いのほか遠いので注意が必要だ。森ノ宮駅で降り、直通の改札を通って近鉄大和西大寺線に乗る。東花園で降りると、たくさんののぼりが立っており、人の列ができていた。それらにしたがって歩き、試合開始の1時間ほど前に到着した。飲み物の持ち込みが禁止となっており、入り口の持ち物検査でお茶の入ったペットボトルを捨てさせられた(食べ物の持ち込みは、当初禁止となっていたが、取材日翌日の試合から認められることになった)。チケットには、混雑で入場に60分以上かかる場合があると記載されていたため、少し心配だったが、実際はスムーズに入場できた。そこで、スタジアム内を見物してみると、近江牛すじコロッケやビールといった飲食物が売られていた。何か飲みたければ買えということか、でも高いな……と思ったが、そんな人向けに無料の給水所が用意されており、紙コップで水が配られていた。このほか、花園ラグビーミュージアムという展示スペースがあった。花園ラグビー場の歴史を紹介するパネルが展示されているほか、日本代表や高校ラグビーの貴重なユニフォームなどが飾られている。

座席に戻ると、場内アナウンスが流れていた。まず英語で次に日本語、という順番の放送を聞き、目の前で始まろうとしているのが国際試合であることを実感した。座席は、ゴールの真後ろから少し左にずれたところだった。できればフィールドの長辺側から見る方が分かりやすいが、試合中はスクリーンに横から撮る映像が流れるので、遠くて見にくいときはそちらに目を移せばよい。

《いよいよ試合開始》

試合開始から5分、イタリアがラインアウトでボールを取り損ねる。すかさずナミビアがボールを拾い、パスを繋いでトライに成功。世界ランクで劣るナミビアが先制した。ボールが繋がるのに合わせて「おぉ」という声が連なり、トライが決まると、大歓声に変わった。しかし、イタリアが攻勢を強め、11分に同点に追い付いた。その後は、イタリアがボールを前に運ぶも、ナミビアの選手が2人3人ととびかかり、トライ寸前で阻止する。

しばらくして、両チームの控え選手がウォーミングアップを始めたのだが、彼らはフィールド内に完全に入っていた。プレーの妨げにならないように配慮していたものの、フィールド脇で体を動かすのが当然だと思っていた私にとっては驚きだった。また、プレーの中断時に、給水のためにスタッフがピッチに入っていく光景が度々見られたが、これも、サッカーでは見られないため新鮮に感じた。

さて試合は、イタリアが幾度のスクラムで優位に立ってじりじりと攻め込み、対するナミビアが粘る展開となった。25分、イタリアの選手がステップで相手のタックルをかわして抜け出し、ゴールに激突しながらトライを決めた。40分でどらのような音が鳴らされた後、ラストプレーで、混戦からイタリアがトライに成功し、21-7で試合を折り返した。

《後半も目が離せない》

後半は、前半の終わりに降り始めた雨が強まり、パスがずれるなど影響が見える。そうした中、イタリアがラックからナミビア陣地に攻め込むも、パスコースがない。その瞬間、イタリアの選手がキックで裏のスペースにボールを出し、走り込んだ味方がキャッチしてトライ。イタリアがリード広げた。さらに46分、ビデオ判定を経てイタリアに追加点が入った。イタリア優位で試合が進む中、ナミビアが反撃し、ペナルティゴールで3点を返す。すると、判官贔屓というべきか、客席からナミビアコールが起こるなど観客が後押しし、ナミビアがイタリア陣地に攻め込む。そして、ラインアウトからパスをつないでトライを奪い、ナミビアが5点を返す。畳みかけたいナミビアだったが、逆に69分と75分に追加点を奪われ、点差が32点に開いた。それでも、終了間際にナミビアがトライとキックで7点を返す。しかし、追い上げもここまで。47-22でイタリアがナミビアを下した。

《観戦を終えて》 

実際にスタジアムで観戦すると、「ドスン」、「バチン」と体がぶつかる音や、選手同士の指示を出す声が聞こえてきてとても迫力があった。「おぉ」、「行け!」といった歓声で盛り上がる一方、トライ後のキックの前や、混戦からボールを出す前の一瞬の静止時など、客席が静かになるタイミングもあり、そのメリハリに、思わず息をのんだ。また、周囲の観客から、「ラックになってるわ」、「イタリアのチャンス!」といった声が聞こえ、観戦の助けになった。

「外に出たけど、どっちのボールから再開?(蹴り出した位置やバウンドによって違うなど複雑)」、「なぜ今のが反則?」など、分からないことが多く、奥が深いスポーツであることを実感するとともに、もっと知って様々な視点から楽しみたいと思った。同時に、攻防に見応えがあり、ルールは選手の反応や近くから聞こえる声などで何となく分かるため、知識が少なくても楽しめるのも魅力であると感じた。加えて、今回は、背番号を見る余裕がなかったので、今度はそこにも注目して観戦したい。ラグビーワールドカップは11月2日まで行われるので、読者の皆様も、ぜひスタジアムで、厳しければテレビで、一度観戦してみてほしい。

《チケットが取れなかった人へ》

ワールドカップ各試合会場には、「ファンゾーン」という応援スペースが設けられている。パブリックビューイングが行われるほか、対戦国の料理が販売される。花園では、ラグビー場の北にある野球場で開催される。

京大ラグビー部

ワールドカップのチケットが取れない、行ける会場の試合と自分の予定が合わない、ワールドカップが終わった後もラグビーを楽しみたい、そんな人には、京大ラグビー部の観戦がおすすめだ。

京大ラグビー部は、関西学生リーグBに所属する。昨季は3位で昇格を逃しており、今季での雪辱を目指している。1・2位となればAリーグ下位との入替戦に進出できる。   

部の強みは、上下関係が厳しくなく、良い意味で体育会らしくないことだという。厳しい練習をみんなで乗り越えていくという意識で前向きな言葉をかけあう。

部員は、「ぜひ試合観戦に来てほしい」と呼びかけた。今季はここまで1勝1敗で、10月6日に大阪国際大学グラウンドでの大阪教育大学戦を控える。10月27日には、京大宇治グラウンドで龍谷大学戦が行われ、11月からの2次リーグで順位を確定させる。詳細はホームページやツイッターを参照。

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