文化

環境賦課金制度を俯瞰する 新たなる挑戦に残る課題

2008.05.01

京都大学は本年度より省エネルギー、及び温室効果ガス削減を目的とした環境賦課金制度を策定した。本制度により本年度は本部・各部局から 1・2億円づつ、合計2・4億円の徴収金収益が見込まれている。今回は、本制度の詳細部分が決定した経緯について、「京都大学環境賦課金方針」を参考に、特に本制度が部局に対し、大きく配慮しすぎているのではないか、という点を問題意識とした取材を行った。(京)

環境賦課金制度の内容が、いかなる議論の上で決定したのかについては、エネルギー・温暖化対策合同作業部会(以下WG)がインターネット上で公開している「京都大学環境賦課金方針」に、本制度の詳細についての検討が記載されている。これによると賦課方式や適用範囲についての4つの検討事項に対し、主に「環境効果(最大4・5点)」「事務作業量(最大3点)」「(部局、本部の)受け入れ可能性(最大3点)」などの項目別にポイントを与え、合計点の最も高い方式を採用している。しかしこの採点項目の詳細を見ると、採用されたすべての方式において、「受け入れ可能性」のポイントは最大の3点となっており、「環境効果」において最大の4・5点を示している方式は、課金対象に関する項目を除き全て採用されていないことがわかる。「事務作業量」といった項目も、実際には受け入れ可能性と同義ではないだろうか。であるとすれば、これは受け入れ可能性の得点を恣意に水増しする理由となってしまっているのではないか。

多少なりとも穿った考え方をした場合、この採点結果のみを理由として「負担は部局と本部で折半」などの方針が確定したとは考えにくい。なぜなら実際に、京都大学では伝統的に理系部局の発言権が強く、本制度もエネルギーを大量に消費する部局に大きな負担となることから、受け入れ可能性に過剰に配慮した妥協案に落ち着いてしまった疑いがあるからだ。右下図に一例を掲載するが、総合評価ではきわめて僅差にも関わらず、部局の反対を過剰に恐れている姿勢が伺える。 経団連を筆頭とした産業界は、これまで温室効果ガス排出の削減を目的とした環境税の導入に真っ向から反対してきた。議論が平行線を辿る中、今回の京大における環境賦課金制度の導入が一つのテストケースとして成功すれば、公論を説得しうる材料になるのでは、と期待されている。その本制度が、最初から引け腰でのスタートとなっては話にならない。

この点について、WG内の議論に詳しい本部の環境安全衛生部に取材したところ、まず部局からの反発がほとんどなく、スムーズに受け入れられたことを強調した上で、受け入れ可能性に関し大きく配慮した部分を否定しなかった。「まずスタートさせることが重要」と主張する本部は、5年という暫定期間を乗り切るためにも、やはり最初からリスクの感じられる制度設計を敬遠したとみられる。

部局と本部で負担を折半 省エネ効果期待できるか

本制度の一つの課題は、賦課金の負担を部局と本部で折半する、中途半端な方針から生じるだろう。まず第一に、本部は賦課金を投資する優先順の筆頭として、低効率なエネルギーロスの大きいエネルギー消費媒体を、高効率なものに転換することを挙げている。上図に例として示した通り、問題点は、本部から各部局ごとの原資の供給が偏ることを認めている点にある。本部からの原資の割当は基本的に本部の裁量で決まるため、既にエネルギー消費媒体の高効率化を積極推進していた部局へは、本部からの原資の供給が少なくなり、これに消極的だった部局が多額の原資を得る、不公平な事態が発生してしまう。この点について本部は、上図の「部局A」に対し、過去の省エネ努力を評価した何らかの報償策を用意する必要があるだろう。

さらにこの方針では、もともと環境意識の低かった部局は、本部からの原資の供給による施設改修などでの削減効果に頼ってしまえる以上、最も重要な個々人の省エネ意識の誘発について効果が期待できない懸念もある。

併せて、本制度の制定は極めて迅速に行われた反面、制定前に公開説明会などが満足に行われていなかったことから、大半の学生は詳細を全く知らないままなのでは、という声も聞かれる。そのような中で、本部が最重要視する省エネへのインセンティブが達成できるかについて、疑問視する声も大きい。

《本紙に図掲載》