大阪北部地震から1年 耐震化を考える(2019.06.16)

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6月18日、大阪北部地震から1年を迎える。これを前に、今回、京大の地震対策の現状を取材した。また、耐震化という課題に関しては、丈夫な建物に建て替えれば解決するものではなく、その地での生活や伝統を守りながら取り組むことが求められる。そこで、学外の事例として、昨年、耐震改修を終えた南座を取り上げ、地震への備えを考える。(村)

京大の現状 昨年の災害を受けて


耐震化の進度

まず、建物の耐震化の現状を確認する。京大は、ホームページ上で「施設の耐震性能」という資料を公開している。これは、キャンパス内の各建物について、耐震基準を満たしているかどうかが色分けして示されているマップなどからなる。この資料によると、職員宿舎を除く耐震化率は、2011年度の86%から、2016年度の時点で97・5%まで上昇した。2017年度以降、同資料は更新されていないが、京大によると、南病棟の取り壊しや女子寮の改築整備などにより、2018年5月時点で、99・4%だという。また、昨年の大阪北部地震を受け、ブロック塀等の緊急点検を実施し、順次改修を行っているという。

災害対策

京大は、災害対策について、「京都大学危機管理規程」などで定めているほか、学生や教職員向けの「地震対応マニュアル」を公開している。マニュアルには、地震が起きた際の安全確保の手順やキャンパス内の避難場所などが記されている。このほか、京大は、緊急時に学生の安否を把握するための「安否確認システム」を整備している。大規模な自然災害などが起きた際、学生がスマートフォンなどからアクセスして、安否状況を登録する。集まった情報をもとに、大学が▼授業や試験の再開時期の検討▼家族からの問い合わせへの対応▼被災した学生や教職員の支援等を行うという。安否確認システムについては、昨年、大阪北部地震をはじめとして災害が相次いだことを受け、運用を開始する基準を見直したという。「京都市又は宇治市域」で震度6弱以上の地震が発生した際、直ちに安否を登録するよう呼びかけていたが、見直し後、該当地域を「京都市及びその周辺地域」に拡大し、他府県を震源とする大地震の際も安否を登録するよう求める形に改めた(注)。また、災害時の広報について、その手段や内容を検討したほか、災害等に伴う休講等の措置に関する要項を作成したという。

(注)その他の災害の際は、大学から安否確認のメールが届いた場合に、安否を登録することとしている。

避難所として

緊急時の避難場所としての備えはどうか。京大では、キャンパス内の避難場所を、「一時集合場所」、「避難場所」、「一時収容施設」に区分けし、状況に応じた避難を呼びかけている。「一時集合場所」は、各部局の学生や教職員が建物から一時的に退避する場所で、各部局が建物周辺の広場、空き地等を指定している。負傷や行方不明の有無を確認するとともに、消火活動や救出・救護における拠点とするという。「避難場所」は、「一時集合場所」が使用できない状況に陥った際に避難する場所で、近隣のグラウンドや河川敷といった広い平地を各部局が指定している。「一時収容施設」は、災害により交通機関が途絶して帰宅できなくなった学生や教職員を受け入れる施設で、食料や飲料水を配付するほか、災害に関する情報や休憩場所を提供する。総合体育館や西部学生食堂、吉田国際交流会館などのうちから、災害時に危機対策本部長が指定する。また、帰宅困難者への備えとして、1人当たり2食分の食料と1・5㍑の飲料水を備蓄している(大学構成員の約半数が帰宅困難になった場合を想定して計算)。このほか、毛布やカーペット、簡易トイレも備わっているという。

南座の事例 伝統の継承と耐震化


四条大橋の東に位置し、伝統芸能の舞台として江戸時代から親しまれてきた南座は、2016年2月に一時休館して耐震改修工事を行い、昨年11月、新開場を迎えた。日本最古の歴史を持つ劇場である南座は、伝統を継承しつつ耐震性を高めるという難題に、いかにして向き合ったのか。松竹株式会社南座の小林雄次郎副支配人に取材し、改修の全容をまとめた。

改修の概要

①外観の保持
歴史ある建物の外観を継承することを目指した今回の改修では、デジタルデータが活用された。あらゆる角度から内装を記録した上で、すべての装飾を取り外し、コンクリートを露出させる「スケルトン化」を実施。その後、鉄筋コンクリート製の耐震壁を205カ所に配置した。そして、取り外した装飾に光源のLED化といった措置を施し、保存したデータをもとに改修前の内装を再現した。

②屋根の耐震化
大屋根にも大規模な改修が行われた。約3万枚の屋根瓦が軽量のものに葺き替えられ、屋根の総重量が軽減した。このほか、天井や屋根内部の鉄骨架構については、3Dモデルを作成して内部空間の検証を実施。それをもとに、既存の鉄骨に加えて4500ピースが新たに接合され、耐震性が高められた。

③設備の充実
今回の改修では、耐震補強のほか、設備の充実もポイントとなった。改修前、来場客は階段を利用して場内を移動していたが、今回、エレベーターが設置された。このほか、多目的トイレの増設など、更なるバリアフリー化に着手した。
座席については、席数を減らすことなくゆったりと座れるように再設計され、全席が新調された。また、1階席を「フル・フラット化」できるシステムが導入された。これにより、座席を取り外して舞台面と同じ高さの空間を作り、参加体験型の公演を展開することが可能となった。また、音響・映像システムの更新により、最新の技術を用いた新たなコンテンツの上演が実現した。

歴史的経緯

南座は、慶長年間(1596年〜1615年)に起源をもち、元和年間(1615年~1624年)に官許されたとされる7つの芝居小屋の1つとして誕生した。同一の場所で興行を継続してきたという点で日本最古の劇場である(注)。他の6カ所が経営不振や火災などで閉場する中、開場時と同じ四条河原の地で興行を続けてきた。現在の南座は1929年に築造された建物で、桃山風の破風造りを特徴とする。国の登録有形文化財や京都市の歴史的意匠建造物に指定されている。1991年に大改装工事が行われ、その後、発祥400年を3年後に控える2015年、京都市による耐震診断が行われた。

2016年2月、診断の結果を踏まえ、耐震工事を施すために休館することを決定した。工事内容の検討に際し、伝統の継承というコンセプトのもと、歴史ある建物の外観を維持しつつ改修を進める方針を決めた。担当の施工会社の責任者は寺社仏閣の改修を経験しており、今回、瓦、金細工、絨毯といった各箇所について、それぞれを専門とする職人を手配し、内装の継承方法を模索したという。調査と検討に1年8カ月、工事に1年の約2年8カ月をかけ、新開場に至った。

(注)歌舞伎の祖である出雲の阿国が「かぶきをどり」を演じたとされる四条河原では、江戸時代、様々な芸能が演じられていた。徳川幕府が、これらの管轄を目的に7つの劇場を整備し、興行権を官許した。(黒川道祐『雍州府志』)

改修後

今回の改修後、来場者や出演者から、「変わっていなくて安心した」という声が聞かれたという。柱の配置から壁の質感、絨毯にあしらわれた文様に至るまで、あらゆる面で改修前の内装が保存されている。改修前を知る人が、「たしかに綺麗になっているけど、どこが変わったの?」と驚くほどである。もちろん、何も変わっていないわけではない。外からは見えないところに耐震補強を施すことで、伝統を守りつつ地震への備えを進めたのだ。

昨年6月18日に大阪北部地震が発生したが、その時点で耐震補強部分の工事は終了しており、再開場に向け細部の残工事に入っていた。当時、地震による被害は一切なかったという。震源地となった大阪に比べると京都全域で被害が少なかったとはいえ、「良い試練になった」とし、耐震化の実現を確認できたという。

南座は今後、伝統的な古典芸能から新たなライブエンタテインメントまで、幅広い文化を国内外へ発信していきたいとしている。なお、今年9月までの毎月、新開場記念公演が行われており、6月は新作歌舞伎『NARUTO―ナルト―』が公演中となっている。そのほか、通常公演等の情報はホームページを参照。

※情報はすべて2019年6月16日号掲載当時のもの。

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