アイヌ遺骨 返還と謝罪求める 京大 話し合い拒む(2019.11.01)

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京大総合博物館が所蔵するアイヌ遺骨をめぐり、アイヌ民族の川村シンリツ・エオリパック・アイヌ氏や平田幸氏、「京大・アイヌ民族遺骨問題の真相を究明し責任を追及する会」が10月15日、遺骨の返還に向けた話し合いや、遺骨収奪の謝罪と賠償を求める要求書を提出した。京大は、「担当者が不在」として、要求書は受け取ったものの話し合いは拒否した。

京大の調査に基づいて文科省が公表している資料によれば、京大総合博物館には、アイヌ民族の遺骨87体やその副葬品が収蔵されている。遺骨や副葬品は、京都帝国大学医学部の清野謙次教授(当時)が、1924年から1926年にかけて、樺太や釧路市、根室市、厚岸町などで、墓を掘り返すなどして収集した。清野氏は、集めた遺骨に基づいて、1949年に論文「古代人骨の研究に基づく日本人種論」を執筆している。

アイヌ民族遺骨の返還を巡っては、政府が2018年に返還のガイドラインを策定した。その中で、京大を含む各大学が保管している遺骨のうち、「発掘・発見された出土地域が記録などから明らかであるもの」については、申請があれば条件を満たした場合に限り出土地域に居住するアイヌ民族へ返還し、条件を満たさない場合は国が北海道白老町に建設を進める「慰霊施設」に集約させる方針が示されている。申請は今年4月から10月までに受け付けられ、今後、返還と「慰霊施設」への移管が進められる。

今回提出された要求書では、政府ガイドラインが遺骨返還に様々な条件をつけていることを批判。日本も批准する「先住民族の権利に関する国際連合宣言」の第12条で明文化された「遺骨の返還に対する権利」に基づき、遺骨をアイヌ民族に返還するべく話し合いの場を設けることを求めている。さらに、遺骨が「収集」された当時は、強制移住や漁業禁止といったアイヌ民族に対する差別・排除の政策が取られていたことを指摘し、遺骨を持ち出した経過を明らかにして謝罪と賠償をすることを要求している。またあわせて、京大に保管されている琉球、奄美の遺骨をそれらの地域の人々に返還するよう求めた。

10月15日には、旭川アイヌ協議会の川村氏やアイヌ民族団体「レラの会」の平田氏、「追及する会」のメンバーらが、事務本部棟を訪問し、担当者へ直接要求書を手渡しするよう守衛に取り次ぎを求めた。本件を担当する総務部総務課は、「担当者が不在」として、代理の職員に本部棟玄関前で要求書を受け取らせた。平田氏が要求書を読み上げ、改めて返還を求める思いを説明したが、職員は話の途中で引きあげ本部棟内に戻った。なお、川村氏らは2013年以降、毎年書面の提出を行ってきたが、受領を拒まれており、今回初めて職員が書面を受け取った。その後、川村氏らは、時計台前のクスノキの下で、先祖供養の儀式・イチャルパを執り行った。

要求書について、本紙の取材に対し京大は、「本学としては、政府の方針に協力して対応することにしている」との見解を示し、独自の返還を否定した。収集の経緯については「当時の状況を明らかにする資料は不十分で、現在、大学としての見解を示すことは困難」と述べた。政府ガイドラインに沿った返還申請は10月21日現在、京大にはなされていないという。京大所蔵の遺骨が北海道白老町の施設に集約される時期については、「文部科学省等と調整中」と答えた。

「1日も早くコタンに返還を」


要求書の提出と同日に開かれた集会で川村氏は、アイヌの葬送において、遺骨はコタン(集落)の土に還され、コタンごとに先祖の供養が行われるべきだと説明し、先祖の慰霊のために速やかに遺骨を返還し、遺骨収奪を謝罪すべきだと述べ、現在の京大の対応に怒りをあらわにした。平田氏は、返還の申請手続きで負わされる苦労について語った。「アイヌだという証拠が必要」と役所の職員に言われたエピソードを紹介。これまで、差別や偏見により、アイヌだと言えなかったり、アイヌの戸籍をあえて残していなかったりする状況があるにもかかわらず、遺骨を奪った側である和人側から「アイヌだと証明せよ」と言われ、「とてもショックだった」と話した。返還に条件を付けることなく、「一刻も早くコタンに遺骨を返して」と切実な思いを述べた。

【解説】遺骨を集約する「慰霊施設」について


政府は、「慰霊施設」への集約後、遺骨は施設で管理され原則として返還の求めがあれば応じるとしているが、条件を満たせば研究利用を認める方針だ。2007年に「先住民族の権利に関する国際連合宣言」が国連総会で採択され、08年に「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」が衆参両院で可決されたことを背景に、政府は、アイヌ政策推進会議を中心に、大学や博物館に所蔵されているアイヌ遺骨の返還、管理、研究のあり方の議論を進め、条件付きで返還し「慰霊施設」への集約する方針を2014年にまとめた。2015年からは、北海道アイヌ協会、⽇本⼈類学会、⽇本考古学協会が「これからのアイヌ⼈⾻・副葬品に係る調査研究の在り⽅に関するラウンドテーブル」という話し合いの場を設け、最終報告書では「アイヌへの研究成果の還元は十分になされず、一部の研究はアイヌの社会的偏見を助長した」こと、「研究目的の遺骨等の収集に関しては、十分な説明と同意の取得がなされず、盗掘との判断を免れ得ないような記録が残っている」ことが明記された。しかし、遺骨を利用した研究については、いくつかの条件を付したうえで認め、現在、研究利用のための倫理審査を行う委員会の準備が進められている。人類学会が、アイヌ民族からの反発を受けながらも、「慰霊施設」へ移管された遺骨の研究利用を求め続け、主張を認めさせた。

このように未だに研究利用に向けた動きがあることについては、今回の要求書も批判しているほか、他のアイヌ民族からも反対の声が上がっている。

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