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吉田寮訴訟 寮生「交渉の歴史軽視」と批判 当局の主張に反論 第2回弁論

2019.10.16

京大が吉田寮現棟の明け渡しを求めて寮生20名を提訴した問題で、10月7日、第2回口頭弁論が京都地裁で開かれ、寮生が提出書面の要旨について弁論した。提訴に踏み切った京大当局を「強権的で、多くの人が話し合ってきた歴史を軽んじており、憤りを感じる」と批判し、訴訟の取り下げと交渉の再開を改めて求めた。第3回口頭弁論は、12月26日、京都地裁で行われる。

裁判には、被告側から寮生と弁護団の計18人、原告の京大からは代理人の弁護士4人が出席した。始めに、寮生の代理人の弁護士が準備書面に基づいて報告した。弁護士は、大学当局が寮自治会との交渉が建設的でなかったとの見解を示していることについて、交渉で合意して食堂棟の補修や新棟の建設が2015年に実現したことを説明して反論した。

続いて、代表の寮生が約10分間要旨弁論を行った。当局との話し合いに参加した経験をふまえ、改めて交渉の再開を求めた。自治会と大学は、寮の運営について話し合いで決定する旨を含む確約を結んできたが、現執行部は昨年8月に文書を発表し、「半ば強制されて署名したものであり、過去の確約書の内容に拘束されることはない」としている。陳述の中で寮生はこれについて、2012年に確約を結んだ当時を振り返り、写真を示して「赤松副学長(当時)は顔をほころばせていた」と述べ、当局の見解に異を唱えた。続けて、公開の場で団体交渉を行うことが「強権の発動を抑止する」とし、交渉を拒否する当局を「話し合いを積み重ねてきた歴代担当者の姿勢に学ぶべき」と批判した。寮生が弁論を終えると、傍聴席から拍手が起こった。

寮生による弁論の後、準備書面の確認が行われた。交渉の再開を求める寮生に対し原告の京大は、寮生の不法占有を主張し、在寮契約が有効だとしても大学側の裁量で解除できるとして現棟の明け渡しを要求している。第1回口頭弁論で寮生側は、求釈明事項として、不法占有とする場合の寄宿料の位置付けなどを説明するよう京大に求め、今回の弁論で、京大は準備書面として回答を提出した。内容について京大は本紙の取材に対し、「係争中の案件に関わるため答えられない」とした。

最後に裁判長は京大に対し、老朽化以外に明け渡しを求める根拠があればそれについて説明するよう求めた。京大は、次回の弁論に向けて準備を進めていくとしている。第3回口頭弁論は、12月26日15時から、京都地裁で行われる。

傍聴希望150人超 集まる

裁判当日、京都地裁入り口前では、開廷の約1時間前から抽選用の整理券が配布された。84人の傍聴席に対し、150人を超える傍聴希望者が列を作った。同日夜には、吉田寮自治会が京大文学部第3講義室で集会を開き、傍聴できなかった学生や市民ら100人以上がこれに参加した。要旨弁論を行った寮生が裁判の様子を報告したほか、代表の寮生が食堂の運営や団体交渉の意義について改めて説明した。最後に、寮生ら4名が登壇し、パネルディスカッション形式で大学との交渉や寮の今後について意見を交わした。食堂棟の補修を巡る交渉に参加した登壇者の一人は、「難しい話し合いだったが、大学と意見をすり合わせて合意を生み出せた」と当時を振り返った。また、現寮生は、「寮生として寮での生活を引き継ぎさらに良くしたい」と述べ、「寮生以外の人にも関心を持ってもらいたい」と呼びかけた。

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