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731部隊論文 「検証を求める会」設立 京大の責任を問う

2018.05.16

1月20日、「満洲第731部隊軍医将校の学位授与の検証を京大に求める会」(以下、求める会)が設立された。終戦直後に京都大学が731部隊の隊員に授与した学位について、その主論文に人体実験の疑いがあるとして、大学に検証を要請することを目的とする。

求める会によれば、京大は1945年、731部隊の元隊員・平澤正欣氏に医学博士の学位を授与した。平澤氏はその主論文で、ペスト菌を保有するイヌノミを「さる」に付着させ、付着したノミの数と感染率の関係を調べる実験を行ったと報告している。しかし、「發症さるハ附着後6〜8日ニシテ頭痛、高熱、食思不振ヲ訴へ」という表現があること、使用したサルの分類が明記されていないことなどから、論文中の「さる」は人間であった可能性があるという。

また、論文を審査した審査委員も「『イヌノミ』も亦人類に対する『ペスト』媒介蚤なる新事実を発見せり」と評価しており、この実験がサルではなく人に対して行われたことを認識した上で学位を授与していることが分かるという。このことから、論文の著者だけでなく学位を授与した京都大学にも責任があるとしている。

求める会事務局長の西山勝夫・滋賀医科大学名誉教授は本紙の取材に対し、「京大が戦争に加担する道を選んだ明確な証拠であり、これを切り口にして、京大が過去の問題に自ら向き合うことを期待する」と述べた。当該論文以外にも非人道的な実験に基づく論文で学位を取得した事例があり、これらについても大学が自ら検証を進めるべきだとした。

西山氏を含む医師・医学者らは2000年頃から、日本医学会や日本医師会に戦争犯罪の検証を求めるため、研究会を立ち上げて検証を進めており、その過程で戦争と大学との関わりも明らかにしてきた。

また、2015年に防衛省が安全保障技術研究推進制度を創設するなど、軍事研究復活の動きがあることを懸念し、昨年9月頃から京都大学に縁のある研究者が集まり、求める会を設立した。

求める会は、京大総長及び医学研究科長に平澤氏の学位撤回を求める要請書を提出することを目指し、現在ホームページなどで賛同署名を募集している。6月30日で募集を締め切り、7月に要請書を提出する予定だ。

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