悲哀が生んだ西田哲学 展示会「京大の西田幾多郎」(2019.09.16)

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9月4日から、石川県西田幾多郎記念哲学館と京大文書館が、展示会「京都大学の西田幾多郎」を共催している。それに先立ち、3日、会場の京大百周年時計台記念館1階歴史展示室で、哲学館の山名田智沙子氏、京大文書館の西山伸教授、文学研究科の林晋教授らが展示品を紹介し、見どころを語った。

今回の展示会では、西田幾多郎にまつわる貴重史料が、京大赴任や家族と住んだ家など5つのテーマに分類されている。西田の故郷石川と京大に残る53点が展示されており、そのうち西田の学位記や杖など約30点が初公開だという。

40歳で教授となった西田の京都での暮らしは、公私ともに苦悩の連続だった。学問の面では、赴任直後に発表した『禅の研究』が脚光を浴びたものの、それ以降手応えをつかめない時期が続いた。さらに家庭では、息子が若くして亡くなったり、妻や娘が病に倒れたりと、相次いで不幸に見舞われた。しかし、哲学の動機は深い人生の悲哀でなければならないという言葉を残すなど、京都での日々が西田に確かな影響を与えたと林教授は解説する。実際、京都での悲哀を経て完成させた論文「場所」をきっかけに、西田の思想が「西田哲学」として慕われるようになり、京都学派が形成されていった。苦悩の約10年間を過ごした借家は2016年まで田中上柳町に現存していたが、取り壊されてしまった。展示会場には、解体直前と西田の居住当時の写真が、エピソードを添えて並べられている。

展示会の一番の見どころとして林教授は、現在の吉田南総合図書館である、旧制第三高等学校の図書館に西田が寄贈したフィヒテの著作本を挙げた。それには、西田が亡くなった息子を偲んで詠んだ歌が直筆で記されている。西田幾多郎と聞くと、『善の研究』が有名であることから、禅僧のような姿を思い浮かべるかもしれない。だが実際は、厳しく育てた息子が亡くなると、泣き暮れて茫然自失に陥るなど人間味のある一面を見せたという。「哲学者、西田」だけでなく「人間、西田」を知ってほしいと林教授は語った。山名田氏は、晩年を鎌倉で過ごした西田だが、拠点としての思い入れが強かったのは京都であると説明した。今回の展示会は、その京都での西田に、石川と京大の史料を通して触れられる貴重な機会であると強調した。

展示会は11月4日まで行われ、入場無料で申し込み不要となっている。また、10月21日には、時計台記念館2階の国際交流ホールⅢで、展示会と連動した講演会が開催される。西山教授と林教授に加え、福井工業大学の市川秀和教授が、専門的な視点から「京都大学の西田幾多郎」を解説する(要申込)。(村)

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