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民間企業で先行か 京大「“本質”発見は山中教授の功績」 ヒトiPS細胞

2008.04.16

京都大学は11日、バイエル薬品(大阪市)の研究チームが山中伸弥教授のチームより先に、ヒトiPS細胞作製に成功、特許を出願した可能性があるとの新聞報道を受け、コメントを発表した。松本紘・副学長(研究・財務担当)は、今回のものも含めiPS細胞の研究はすべて、山中教授らの研究成果発表と関連する特許に基づくものであるとの認識を示し、京大としては一喜一憂する事無く実用化に向けて粛々と研究を進めていく、と述べた。

報道によると、今年1月、オランダの科学誌にバイエル薬品の研究チームが新生児の皮膚細胞を用いたヒトiPS細胞の作製に成功したとの論文が掲載され、論文中の培養期間の記述等から完成時期が昨年4月から5月と推測でき、山中教授らによる成功よりも早い可能性があるという。ただし一部報道では山中教授らの成功が昨年7月頃としているが、京大は成功の時期を公式に発表していない。

バイエル薬品の親会社、ドイツ化学メーカーバイエルによる特許出願が京大より早い可能性について、「知的財産として特許を出願するのは当然のこと。バイエル以外でも、(山中教授らが論文を発表した11月以前での)ヒトiPS細胞作製の成功や特許出願の可能性も考えられる」としながら、京大が05年に最初に出願した「分化した細胞を未分化状態に戻す因子」に関する特許がiPS細胞の本質であるとの見解を示した。そのため、特定の企業にiPS細胞の基本技術の特許を独占されることは考えられず、仮に関連技術で認可されたとしても高額な特許料を設定する可能性は低いだろう、と述べた。いずれにしても、特許の公開は出願から一年半後であるため、京大や他機関の出願がどこまで認められるかわからない、としている。

ヒトiPS細胞の研究に関しては世界的に競争が激化しており、民間の営利企業や海外の研究者が関連技術の特許を取得した場合、将来医療現場で実用化された際に利用者の負担が大きくなる可能性がある。そうした事態を避けるためにも、国をあげての研究プロジェクトが京大を拠点として進められている。松本副学長は、出張のため記者会見に欠席した山中教授も、同じ思いで一日も早い実用化に向けて全力を注いでいる、と述べた。

また、大学が知的財産の管理や特許の出願に関して適切な判断ができるように、今後も弁理士・弁護士と相談しながら、企業との協力も視野に入れながら体制や戦略を考えていきたい、としている。

《本紙に写真・図掲載》

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