吉田寮退去方針 新文書に吉田寮が抗議声明 事実誤認や印象操作を批判(2018.10.01)

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京都大学当局が8月28日付で発表した文書「「吉田寮生の安全確保についての基本方針」の実施状況について」に関し、その内容に多くの誤りが含まれるとして吉田寮自治会は9月21日に抗議声明を出した。吉田寮をめぐっては、寮生に9月末までの退去を迫る当局に対し、寮自治会がその方針の撤回を求める状況が続いている。

京大当局は吉田寮生の退去と代替宿舎への転居を定めた「基本方針」を昨年12月に公表した。今回、川添信介・厚生補導担当副学長の名で発表された8月28日付の文書では、吉田寮現棟の老朽化対策をめぐる当局の見解を提示しつつ、基本方針に基づく寮生の退去・転居の進展状況を記している。一方、この文書で示された当局の見解には多くの誤りや恣意的な事実解釈があるとして、吉田寮自治会は9月21日に発表した抗議声明のなかで該当箇所を個別に取り上げて反論している。

老朽化対策が進まない原因は


文書のなかで当局は、現棟の老朽化対策は寮自治会が「補修を強く主張し譲らなかった」ために解決していないとの見解を示した。対して寮自治会は、2012年に赤松明彦副学長(当時)が補修の意義を認めて以来、補修方法に関する話し合いが進んでいたことを指摘した。加えて、2015年には大学役員の干渉で話し合いが中断したことや、寮自治会の示す補修案に当局が応答しないことに触れて、老朽化対策が進まない原因は当局にあるとしている。

ただし、当局は「過去の「確約書」の内容に本学が拘束されることはない」と主張している。その理由として、大学の正式な機関決定を経ていないことや、大衆団交のもとで時に半強制的に署名させられたことを挙げた。これについて寮自治会は、当局との権力差を埋めるために大衆団交(自治会側の参加者を限定しない形式)を採用してきたのであり、歴代の副学長はそれを理解していたと批判している。また半強制的な署名について、いつ行われた団交のことを指しているのか具体的な証言がないとも述べた。これまでのどの確約書が半強制的な署名により結ばれたものなのか、本紙が大学当局に質問したところ「お答えしかねます」との回答が得られた。また、正式な機関決定を経ていないという確約書の当時における扱いについては「確約書によって異なるため、一概には言えません」と答えた。

2015年3月以来老朽化対策のための交渉が途絶していたなかで、2016年に川添副学長は吉田寮自治会に対し、大衆団交でなく少人数の話し合いであれば応じる意向を表明した。これを寮自治会が受け入れず、従来の大衆団交を主張し続けたために老朽化対策が進展しなかったと今回の文書は述べている。対して抗議声明は、その間にも寮自治会が公開質問状で当局側の検討状況を尋ねていたにも関わらず、当局は真摯な応答をしなかったと追及している。

吉田寮自治会は2014年に現棟の補修方法の一案を当局に提示しており、その案に対する見解を当局に求め続けている。当局は2016年9月に「自治会側の提案も含めて、検討を進めていく」と答えて以来、現在に至るまで「検討中」を続けている。今回の文書でも「現棟の老朽化対策を具体的にどのような方向性で行うかについては検討中」と記述されている。そこで本紙は、その検討がどのような場でいつから始まったのか大学当局に尋ねた。そして「お答えしかねます」との回答を得た。

新棟からの退去をめぐって


京大当局が昨年12月に定めた基本方針は、安全確保と称して築100年を超える現棟だけでなく2015年に完成した新棟からも寮生の退去を求めている。当初は誰が現棟に住んで誰が新棟に住んでいるかわからないというのがその理由だったが、これを受けて寮自治会が現棟と新棟を分けた寮生名簿を提出すると、今度は名簿が信頼できないと理由を付けた。代替宿舎のあっせんを進めるなかで、退寮者の記載や在寮者の不記載の例が相当数あったという。それを踏まえて「自治会の「自治」・「管理」能力を強く疑わせる」と強く語っている。

今年4月以降、当局は寮自治会から名簿を受け取ることを拒否していたが、9月7日に寮自治会が作成した寮生名簿と大学当局が作成した「寮生名簿」とを比較する作業が行われた。寮自治会によると、7月時点の寮生名簿全204名に対して、代替宿舎移転に伴う混乱と思われるものを除き、純粋なミスとしては2名の不記載が当局から指摘されたという。退寮者が記載されたままだったことについては、寮生個々人の事情で事務手続きが遅れたことによるものと説明している。抗議声明では、ミスの規模からすれば「「自治」・「管理」能力を強く疑わせる」と言われるほどではないと応じた。

今回の文書では新たに、大学当局が寮に立ち入って確認することができず、現棟・新棟間で寮生の移動があっても把握する方法がないことを訴え、新棟からの退去が必要不可欠な措置だと強調している。しかし抗議声明によると、寮に立ち入って確認したいとの申し出は大学当局からなかったという。また設備点検や修繕などのため、当局の求めに応じて職員が立ち入ることはこれまでにあったとも指摘している。

◇ ◇ ◇

今回の文書を通じて京都大学当局は、様々な観点から吉田寮自治会を非難するとともに、寮生の退去状況を報告している。また、話し合いを続けたところで新棟を含めた全寮生が退去するという基本方針は変わらないと宣言し、代替宿舎への転居を改めて促している。

文書には多くの誤りがあるとして抗議声明を発表した寮自治会は、文書が触れていない事実を提示しながら当局の言説に反論した。それを踏まえ、「悪質な事実誤認、印象操作、虚偽を訂正し、認識を客観的な事実にもとづいたものへと改める」ことを求めている。重ねて、確約を無視した基本方針の撤回を要求している。

各所から声明続く


9月には、吉田寮自治会のほかにも、熊野寮自治会、文学部自治会学友会常任委員会、西部講堂連絡協議会、自由と平和のための京大有志の会が声明を発表している。これらの声明では主に、退去通告が寮自治会の合意なく出されていること、9月14日に京大当局が話し合いを行なわないと公表したことを問題視し、話し合いを再開することを京大当局に求めている。

また、吉田寮の元寮生が作る「21世紀に吉田寮を活かす元寮生の会」の理事一同が呼びかけた「京大吉田寮の保全活用を求める共同声明」には、元寮生や市民から642人の賛同署名が集まった。声明は、吉田寮現棟の建築的価値を尊重した活用と、話し合いを通じた問題解決を京大に求めている。同会は9月27日、声明と署名を教育推進・学生支援部厚生課の窓口に提出した。

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