科学で食を考える 京都大学地球環境フォーラム「菌の香りとカビの味」(2017.11.01)

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第29回京都大学地球環境フォーラムが2017年10月21日、益川ホールで開かれた。今回は「菌の香りとカビの味」をテーマに、3名の講師らが講演した。

岡田直紀・京大地球環境学堂准教授は、「きのこの生えるところ」と題し、キノコと環境や生態系について話した。キノコには植物と共生するマツタケのような菌根菌と、木材などから生えるシイタケなどの腐生菌という分類がある。菌根菌は、植物の根に共生して菌根を形成し、光合成産物をもらう代わりにリン酸や窒素などを植物に供給するため、植生や土壌の状況によって生育する菌類の種類は同じ場所でも変化する。岡田氏は、菌根菌はホンシメジを除き人工栽培に成功していないのだといい、栽培の手がかりとして、温度や湿度、共生する植物との関係などがキノコ形成に関わるのではないかと展望を述べた。また、福島県での実測データから、キノコが土中の放射性セシウムを吸収することで、放射性セシウムの域外流出を防いでいるのではないかと指摘した。

巽好幸・神戸大学海洋底探査センター教授は、日本列島の特徴が日本食の成立にどのように関わったかを語った。日本列島はプレートがぶつかり合う変動帯に位置するため火山が多く、日本の水はほとんどが軟水だ。金属イオンの少ないこの水質が、出汁文化や日本酒の誕生に一役買ったのだという。巽氏は日本酒の産地である兵庫県の灘五郷を例にあげ、日本で最も鉄分濃度の低いこの地方の水が、酒の発酵に必要な麹菌の働きを活性化するのだと述べた。

琵琶湖博物館で学芸員を務める橋本道範氏は、滋賀県名物の鮒寿司に関する研究を取り上げた。現在の鮒寿司は夏場に子持ちの鮒を漬けたもので、獲れた鮒を塩漬けにする塩切りと、米と共に熟成させる飯漬けの2工程からなる。この工程を経ることで脱水や塩分濃度の上昇、酸性化が起こり、腐敗や食中毒の原因となる菌の増殖を防止できるのだという。また、歴史上の鮒寿司や滋賀県で作られている他のなれ寿司も紹介し、その多様性を示した。その上で、似たような寿司が数ある中で鮒寿司が滋賀県の特産として卓越したのは、琵琶湖の固有種であるニゴロブナや伝統漁法のエリ漁、近隣で取れるコメや木材、近くに京都という都が存在したことなど、周辺の環境や文化に鮒寿司が強く結びついていたからだろうとまとめた。

京都大学地球環境フォーラムは、地球環境学堂が一般市民に研究成果を発表するために年に3回実施している活動だ。多角的な視点からの意見交換と情報共有のために、毎回文理問わず様々な分野から講師陣を招いている。(鹿)

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