生の芸術の今昔を語る 『アール・ブリュット』刊行記念イベント(2017.07.16)

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ミシェル・テヴォー著『アール・ブリュット』刊行記念トークイベントが、6月30日に京都市中京区のギャラリーヒルゲートで開催された。精神分析学の専門家・上尾真道氏が聞き手を務め、訳者の杉村昌昭氏が本書を訳した感慨やアール・ブリュットについて語った。アール・ブリュットとは正規の美術教育を受けていない人が自発的に生み出した絵画や造形のこと。
 
まず杉村氏は、アール・ブリュットの語源について説明した。フランス語でアールは「芸術」、ブリュットは「加工されていない」の意であることから、アール・ブリュットは「生の芸術」とも訳される。「加工されていない」とはいっても、芸術は全て人の手が加わったものではないかと思われるが、アール・ブリュットには既成の手段で加工されていないという意味合いがあるのだという。既成芸術の分類に収まらないため、アール・ブリュットは芸術生産や芸術消費の一般的システムへの転覆性を持っている、と説明した。
 
アール・ブリュットの発見者といわれるジャン・デュビュッフェは、精神病院、収容所の患者が制作した作品をコレクションした。それらは発表する意志のない作品ばかりだったが、デュビュッフェは76年にアール・ブリュット・コレクションを開き、アール・ブリュットを文化的領域に導入し、世に知らしめた。今回和訳が刊行された『アール・ブリュット』はその直前、75年に出版されたものだという。
 
杉村氏によると、日本におけるアール・ブリュットは障がい者アートが主流だが、本来は必ずしも障がい者の作品だけを指すのではない。障害者アートとしてのマーケットが作られ、差別的な包摂がなされている現状が問題だと強調した。各々が一つ一つの作品に向き合い、自律的にアール・ブリュットを考えていく必要があると語った。
 
本作『アール・ブリュット』については、「ぐいぐい引き込む魅力のある本」だと杉村氏は話し、聞き手の上尾氏も著者の筆力に圧倒されたと話した。(竹)

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