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軍事研究 学内指針作成へ ワーキンググループを設置

2017.07.01

学術会議の声明受け

京都大学は5月16日、軍事研究に関する学内の指針作成に向けて部局長会議の下にワーキンググループを設置した。山極壽一総長が6月20日、定例記者会見で明らかにした。年内を目標に全学の合意を目指すという。

京大が指針作成に動き出した背景には、3月に日本学術会議が「軍事的安全保障研究に関する声明」を出したことがある。この声明は、軍事目的の科学研究を行わないとする過去の声明を継承する姿勢を明らかにするとともに、大学などの研究機関に「軍事的安全保障研究と見なされる可能性のある研究」について適切性を審査する制度を設定するよう求めている。声明の原案は、「安全保障と学術に関する検討委員会」で昨年5月から検討されてきた。検討委員会には山極総長も名を連ねた。

京大の軍事研究に関する取り決めとしては、1967年の部局長会議にて決定した「軍からの研究費の援助を受けることは、その成果が戦争に利用される危険があるので、好ましくない」という申し合わせがある。この申し合わせは昨年4月の部局長会議で今も効力を持つことが確認されている。一方で山極総長はこれまで、軍事研究に関する学内の取り扱いについて、「学術会議の討議を見守る」として立場を明言することを避けていた。

資金受領「今さらとやかく言えない」

定例会見で山極総長は、学内の教員が米軍機関から資金を受け取っていたことについて自身の見解を語った。

京大では、2014年から16年にかけて情報学研究科の教授が米空軍アジア宇宙航空研究開発事務所から約1千万円を研究費として受け取っていた。この事実が17年3月に一般紙で報道されると、67年の申し合わせに反するのではないかと学内外から非難の声が上がった。教職員や学生の有志は3月、総長に対して、資金受領が申し合わせに反することを部局長会議で確認し、対外的にも表明することを求める要請書を提出した。この要請書について総長は定例会見上で、「資金受領は、総長に就任する前に学内審査を経て決まっており、今さら私がとやかく言えない」とコメントした。