津波後の海の生態を知る 総合博物館で講演会(2017.05.16)

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13日、京都大学総合博物館で、講演会「Lecture Sereies‐研究の最先端‐」が開かれた。今回は「5年間の潜水調査で2011年津波後の海の生き物たちの回復が明らかに」と題し、フィールド科学教育研究センター准教授の益田玲爾氏が、東日本大震災による津波発生後の気仙沼の海の生態系について講演した。最初に益田氏が今年3月までの6年間の調査結果を解説し、後半は司会の総合博物館館長岩﨑奈緒子氏や参加者との対話形式で進んだ。

益田氏は11年の震災発生後、養殖漁業家の畠山重篤氏に依頼され、2カ月に一度気仙沼で潜水調査をし、海の回復状況を記録し続けている。最初の調査の際には、石油コンビナートの火災があった影響で、石油由来の黒い泥が海底に積もっていた。また、大きな魚はほとんど津波により死に、生き残っていたのは小さな魚ばかりだったという。震災から半年ほど経つと、天敵がいないために小型の魚が爆発的に増え、1年後には南方系の魚が増加した。2年ほど経つと、アナジャコなどの生き物が掘った穴ができ、穴の中に棲む魚や北方系の魚、大型の魚が増加し始め、成長に時間のかかるナマコやアワビなども増えた。成長の遅い生き物ほど個体数の回復が遅く、また湾の奥では生き物の増加が遅れている。全体として魚の種類や数は2年ほどで安定したが、現在も少しずつ増加しているという。

益田氏は共同研究者と共に、津波発生以前の生態系の状況との比較も進めている。津波前のデータはないが、生態系が安定している舞鶴湾の調査結果や、釣り人から聞いた津波前の状況をもとにすると、生態系が完全に回復したわけではないことが分かる。海底の泥に含まれるDNAを解析する環境DNA調査から、津波の前後の魚の種類を比較する研究も進行中だ。

益田氏は、津波被害に遭った地域の沿岸部に防潮堤が築かれていることにも触れ、陸上から海に流れ込む栄養が途絶えることや、生産性が最も高い海岸線に防潮堤をつくることで生態系に悪影響があり、人にとっても、海が見えなくなることで津波に対する危機感が薄れる危険性の方が高いと指摘した。参加者から今後の展望を問われると、現在は年ごとに環境が激しく変化しているが、今後はそれが安定していくのではないかとの見方を示した。(雪)

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