ネグリ来たらず… 「政治犯」を証明できず 不在講演会(2008.04.01)

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『〈帝国〉』『マルチチュード』などの著作で世界的に注目されるイタリアの哲学者、アントニオ・ネグリ氏の来日が中止となった。今回、京大では講演「大都市とマルチチュード」、東大では討論会「新たなるコモンウェルスを求めて」、東京藝大ではイベント「ネグリさんとデングリ対話」が企画されていた。予定されていた講演は、ネグリ氏の不在自体を問題化して、多少内容を変更することで開催された。ネグリ・ルヴェル両氏は、「日本の友人たちへの手紙」と題し、「大きな失望をもって私たちは訪日を断念します…(中略)…パーティは延期されただけで、まもなく皆さんの元へ伺う機会があるだろうと信じたい気持ちです」との談話を発表した。

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21日に京大で行われた講演会「大都市とマルチチュード」では、ネグリ氏より事前に送られた講演原稿を王寺賢太・人文研准教授と市田良彦・神戸大学教授が代読し、日本政府への抗議の意を表した声明を発表した。

声明によれば、今回の来日中止に至った経緯は以下であった。当初の予定では、ネグリ氏はそのパートナーであるジュディット・ルヴェル氏とともに、07年3月20日から4月4日に日本に滞在し、大学などで講演を行う予定だった。

来日3日前の3月17日、外務省はそれまで数ヶ月国際文化会館と両氏に伝えてきた「入国査証は必要ない」との言を翻し、査証申請を行うよう要求。日本への入国査証では、過去の犯歴が問われる。イタリアでの思想上の影響という「政治犯罪」で服役したネグリ氏がこの欄に記入すると、外務省はネグリ氏に対し、自分が「政治犯」である「書類上の根拠」を示せと要求した。入国管理法第5条4項「上陸の拒否」(「1年以上の懲役もしくは禁固またはこれに相当する系に処せられたことのある者」は「本邦に上陸することができない」)の但し書きにある、「政治犯罪により刑に処せられたものは、この限りではない」による「特別上陸許可」を認めるためである。

しかし、フランスに亡命したさい、「政治的亡命」認定されていなかったネグリ氏の「政治犯」である「書類上の根拠」を短期間で示すことは難しく、来日を中止せざるをえなかった。

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また、声明ではこの日本政府の対応を疑問視し、「両氏に対する事実上の入国拒否を企図するものであった」と批判している。

まず、ネグリ氏が「政治犯」であることはすでに国際的に承認されている事実である。氏は、イタリアのモロ首相暗殺事件で、思想上の影響という「道義的責任」を問われて「国家転覆罪」を宣告された。しかしこれは、国際人権規約上無効である欠席裁判による判決だった。これをフランス政府は認め、1983年から14年間にも及ぶイタリアの身柄引き渡し要求に対しネグリ氏を保護してきた。1997年、ネグリ氏はフランスからイタリアに自発的に帰国し、服役するが、刑期を終えた2003年以降は、22ヶ国を歴訪し、どこからも日本政府のような要求を受けていない。

さらに、ネグリ氏のパートナーであるジュディット・ルヴェル氏は短期滞在の場合には査証を免除されるフランス人であるが、その氏にまで外務省は査証申請を要求した。

これらの疑義を呈し、声明では「国境を越えた思想的・学問的・文化交流の機会が奪われ」、「思想信条・学問の自由が侵された」として日本政府に抗議している。

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21日の講演会では、ネグリ氏不在の意味が議題となった。市田良彦氏は、「ネグリが各国を訪れることができるようになったのは、ネオリベ的自由のおかげといってもよい。生活レベルでモビリティが高まり、短期の滞在なら査証が要らなくなっている。その一方で、G8サミットを控え入国管理の厳しい昨今の情勢下では、国際テロ組織のデータが世界で共有されている。そこにネグリは引っかかってしまったということではないだろうか」と話し、ネグリ氏不在の現況を「移動の拡大と超国家的枠組みが火花を散らしている」なかで「自動的に引き起こされたことでは」と分析した。



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