〈書評〉石沢賢二ほか著『南極建築 1957‐2016』(2017.01.16)

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基地のロマンに触れる

南極大陸。交通網が発達し、世界中を自在に訪れることができるようになった現代において、なお容易には足を踏み入れられない秘境の一つである。しかしその反面、人類はこの地を共有財産として、各国それぞれに観測・調査を積み重ねてきた。2016年、日本の南極観測開始から50年のメモリアルイヤーを前に本書が刊行され、その内容にまつわる企画展示が大阪・梅田で行われている。

本書は、南極での過酷な観測活動の基礎となる建築や住環境にフォーカスして、その変遷を追う。その基本構成は、今なお日本の南極観測の要である昭和基地の建設と拡大に始まり、みずほ基地、あすか基地、ドームふじ基地といった内陸基地への挑戦、そして近年の最新技術によってふたたび整備される昭和基地、それぞれの紹介からなる。写真や説明文だけではなく、設計図、イラスト、元越冬隊員や建物設計者の寄稿など、ふんだんな資料を用いてさまざまな角度から基地の実態を明らかにしており、読んでいるうちに南極に対するイマジネーションがぐんぐん膨らむ。特に、基地の構造を可愛らしくも精緻に描く、モリナガ・ヨウ氏のイラストが秀逸である。手づくりの除夜の鐘を鳴らすシーンなど、基地生活の微笑ましいワンシーンも挟まれていて、ますます南極生活への親しみが湧いてくるのだ。

1957年に建設された南極建築第1号は日本初のプレファブ建築であったが、現在建設予定の建物は、近未来的な十二角形の外観を持つ。南極建築は、まさに各時代の最先端技術の結晶だ。そんな南極建築の歴史とは、技術進展の歴史であり、南極の厳しい環境と人類の技術の戦いの歴史である。本書によると、南極建築の最大の敵は、大量の雪を含んだ強風が建築物にぶつかって発生する「スノードリフト(雪の吹き溜まり)」だという。発達したスノードリフトは、建物を雪下に埋没させたり、出入り口を塞いだりする。研究者たちは、これと共存できる建物を模索しつづけてきたのである。『南極建築』展では、現物展示や貴重な映像資料をも交えて、スノードリフトとの戦いを臨場感たっぷりに伝えており、本書とあわせておすすめしたい。

そして本書のもうひとつの魅力は、ブックデザインの美しさだ。どのページにも隅々まで情報が詰め込まれているにもかかわらず、すっきりとおしゃれな図鑑といった印象で、大切に書棚に並べたくなる。寒い冬にじっくり読みたい、ロマンの詰まった一冊である。(易)

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