文化

仏に教わる環境問題 ケンポ・ツルティム・ロドゥー氏講演

2017.02.16

1月24日、第12回ヒマラヤ宗教研究会国際ワークショップが京都大学百周年時計台記念館で開催された。中国四川省西部にある世界最大規模の仏教学校・ラルン五明仏学院より、副学院長のケンポ・ツルティム・ロドゥー氏が招かれ、チベット仏教の考え方に即して環境問題について語った。

環境問題のひとつとして様々な資源の不足が挙げられるが、ロドゥー氏によるとこの原因は人々の欲にある。食欲や物欲はテレビや新聞の広告により増長し、際限なく資源を消費させてゆく。「欲を抑えて足るを知る」とは、節制を説く仏教の言葉だ。質素な生活により心に平安がもたらされ、資源の浪費も抑えられるという。

畜産農業もまた、人の欲が生み出した環境問題の要因のひとつといわれる。食用となる動物を育てる過程では多くの水や穀物が費やされ、資源不足を招く。それだけでなく、家畜の糞尿で汚染された水が適切に処理されず、水質汚染を起こすことも珍しくない。肉食を控える教えが仏教にあることは有名だが、昨今ではこれも環境保護に繋がるのだとロドゥー氏は説く。

山や河、森を神聖視したり、生き物の殺生を禁じたりするのも仏教の特徴だ。こうした教えはまさに環境保護に直結する。また、全ての生き物を慈悲の対象とする仏教は、特定の種のみを保護しようとする多くの運動と比べ、より広範かつ持続的な効果を期待できる。

ロドゥー氏は言う。仏教には環境保護につながる教えが散りばめられているのに、そのことを知らない人が日本には多い。仏教を信仰するとまでいかなくとも、有用な教えは積極的に採り入れ、役立てていってほしい。

「ヒマラヤ宗教研究会」は、こころの未来研究センター・ブータン学研究室の主催で、一般にも向けて定期開催されている。今回招かれたロドゥー氏は、ラルン五明仏学院の副学院長を務めつつ、チベット仏教やチベット民族文化の保護・伝播を目指した活動に取り組んでいる。(賀)