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病院構内の実験室火災 住民らの申入書に回答

2016.11.16

7月1日に京大病院の実験室で発生した火災をめぐり、大学当局は10月14日、住民団体らが9月30日に提出した3度目の申入書に回答した。「法定帳簿の記載不備」が認められたと明記したものの、住民団体らが要求している「住民説明会の開催」への言及は今回はなかった。
 

「法定帳簿の不備」と明記

回答では、「法定帳簿の不備が認められた」という文言が明記された。法廷帳簿の不備とはトリチウムとインジウムの記録が実際の状況と異なっていたことだ。放射性物質を扱う場合、放射性物質の使用や保管、廃棄の記録をつけることが法律で義務付けられている。今回の火災では、記録上「廃棄」されて所定の場所に移動したはずのトリチウムが使用されずに貯蔵室の冷蔵庫に残されていたほか、「廃棄」したとされるインジウムが実際には実験室に残っていた。

住民説明会の言及なし

近隣住民らでつくる「京大研究室火災の情報公開を求める住民連絡会」らは、今回の申入書でも「住民説明会の開催」を求めているが、環境安全保健機構と病院が連名で14日に出した回答には、「説明会」への明確な言及はなかった。本紙の取材に対し機構は、「住民への説明をできる限り最大限にしてきた」との認識を示した。火災発生後に立ち上げたウェブサイトで情報を公開し、近隣住民に対しては回覧板を通じて正確かつ平易に説明したことや連絡会の申入書に回答してきたことなどが理由だという。連絡会の仲晃生弁護士は、「大学の社会的責任を踏まえ、事故の検証や防止策の検討結果を適宜報告し、事故を風化させないでほしい」と話した。

機構では、事故の未然防止に向けた対策を議論しているという。各研究科へ通達を出し、安全管理の徹底を求めている。また、医学研究科への立ち入り検査に際し、管理区域外からも使用している核種やその量、使用者などが分かるよう、ミスを前提とした取り組みを提案した。

火災は7月1日、研究員が実験に用いたヒーターの電源を切り忘れたことで発生した。火災が放射線管理区域内の実験室で発生したことから、連絡会らが適切な情報公開を求め、総長と病院長宛で申入書を3度目提出している。