文化

ほんとうの中立とは 作家・中山千夏さんが講演

2016.10.16

浅野健一ジャーナリズム講座 特別シンポ

 
9月27日、同志社大学今出川キャンパス・良心館で、自主ゼミ「浅野健一ジャーナリズム講座」の特別シンポジウムが開催され、作家の中山千夏さんが基調講演した。子役・俳優として活躍し、市民運動家としても活動する中山さんは、自らの経験をもとにジャーナリズムにおける中立のあり方や学歴偏重の問題点を語った。
 
中山さんは、1973年に青森県でし尿処理場の建設をめぐって起きた対立を取材し、報道の中立性がかかえる問題を認識した。取材を通して、水道の整備と引き換えに建設をごり押しする市の行政が問題だということが分かった。一方で、新聞報道は、市と反対派住民との真ん中に立場をとって両方を適度に批判している。住民側への批判は、権力に利する結果を生み出そうとしていたのだ。こうして新聞報道のおかしさに気づき、以来「ほんとうの中立とは市民の側にたって物をみることだ」と繰り返し主張してきた。前回のシンポジウムで「公共放送の基盤は市民への忠誠心だと思う」という発言がマッカリー氏からあったことを踏まえ、「公共放送に限らず、公共の報道は市民への忠誠心を働かせないといけません」と語った。
 
現在の日本において「市民の側に忠誠を持って仕事をしているメディアがいくつかあるか」と疑問を呈する。「一部の記者は頑張っているかもしれないが、企業としてのメディアは全然ダメだ」と批判した。
 また、大卒ではない中山氏には、ジャーナリズムが、出身大学で派閥を作ってしまっているように見えるという。大学内の権力構造が社会に出てもそのまま続いてしまうのだ。「ジャーナリストは大卒禁止にしてしまえばいい」というジョークで参加者の笑いを誘った。
 
中山氏の講演の後には、山際永三氏(映画監督、人権と報道・連絡会事務局長)と山下幸夫氏(東京弁護士会、特定秘密保護法裁判弁護団)、浅野健一氏(同大大学院教授=京都地裁で地位確認訴訟中、元共同通信記者)、学生代表を交え、パネルディスカッションが行われ、匿名報道の必要性などが話題に挙がった。自主ゼミ「浅野健一ジャーナリズム講座」は、2014年3月に同志社大学から解雇され裁判中の浅野教授を支援する学生らが主催し、年に数回開催されている。(小)

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