〈紀行〉水と酒の街 伏見 お腹も知的好奇心も満たせる旅(2016.10.1)

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お腹も知的好奇心も満たせる旅


出町柳から京阪電車で20分程、伏見桃山駅で降りると、伏見という街がある。駅のすぐ近くに賑やかな商店街があるが、道を入ると酒蔵が立ち並び、さらに南下すると宇治川が流れている。伏見は、昔「伏水」とも書かれたように、良質の地下水に恵まれた土地である。平安時代、伏見の氏神である御諸神社の境内に清水が湧き出し、朝廷より「御香宮」という称号を賜った。この名前は、駅から見て商店街と反対側にある御香宮神社に残っている。今も、良水が桃山丘陵から伏見の街の下を流れている。この適度のミネラルを含んだ豊富な地下水が、きめ細かい伏見の清酒を育ててきた。また、伏見は港町として、参勤交代制度における滞在地として繁栄してきた。「京の底冷え」といわれる盆地特有の厳しい寒さも酒造りに適している。伏見の酒造りは、こういった風土や経済的発展を背景に成長してきた。

伏見に到着してまず行くべきは、月桂冠大倉記念館である。月桂冠発祥の地の酒蔵を利用したお酒の博物館だ。昔の酒造りをしのびながらきき酒もできる。入場するだけで入場特典の日本酒が貰える。まず入って目にするのはさかみづである。隣接する酒蔵で使われている井戸水があり、そこから水が流れていて、飲むことができる。さかみづという名は栄え水とともに古くは酒の異名だったという。その次には酒造りの工程とともに器具が展示され、立派な徳利やおちょこも見ることができる。きき酒できる酒で特筆すべきは「大倉記念館 レトロボトル」である。甘口で飲みやすいが、コクがあって美味しい。大倉記念館でしか買えないので、お土産にぴったりである。他にも伏見で買った日本酒を紹介しよう。まず、「黄桜 大吟醸酒」。伏見の黄桜カッパカントリーで買い求めることができる。これは初めて日本酒を飲む人におすすめで、飲みやすすぎて飲みすぎないように注意が必要だ。次に、後記する鳥せいの隣で買える「神聖」。これはまろやかだが後味が強く、「くぅー!」と声を出してしまいそうになる。

日本酒を楽しんだ後は、十石船に乗ってはどうだろうか。江戸時代、伏見港は旅人を乗せて大阪と伏見を結んだ三十石船が発着した。ひとまわり小さい十石船では濠川、宇治川派流を春と秋に巡り、柳や桜のある美しい景色を楽しむことができる。十石船に乗ると、坂本龍馬が薩摩・長州との連絡に使い、妻お龍との出会いの場ともなった寺田屋や、高瀬川の開削を実現して伏見の発展に貢献した角倉了以の記念碑の横を通る。そして船は一時停止して三栖閘門(みすこうもん)資料館をガイドが案内してくれる。三栖閘門は水位の違う濠川と宇治川を通る船のために2つのゲートを使って水位を調節する施設で、昭和初期の土木遺産である。資料館では城下町としての伏見を知ることができる。豊臣秀吉は区画整理をして城を取り囲むように580以上の武家屋敷を配置した。大名屋敷の名は伯耆町、備後町や丹波橋といった地名に残り、商人町や職人町の名は材木町、魚屋町といった町名に残っている。徳川家康は秀吉の町づくりを引き継ぎ、伏見には日本初の銀座が作られた。受験勉強で学んだ日本史の知識が目の前に広がる街の形で表れてくるのは非常に面白かった。

最後に、伏見で楽しめるグルメを紹介しよう。月の蔵人という店では豆腐、湯葉を中心とする四季折々の和食料理、月桂冠の日本酒を楽しめる。月の蔵人は月桂冠の蔵を改造した建物で、店内にも歴史の趣を感じられる。私は9月限定の蔵人定食を頂いた(月替わりに定食が登場し旬のものを味わえるという)。初めに出てくる自家製の豆腐は、だしの他に様々な種類の塩を使って楽しめる。食後には二種のデザートとコーヒーがつく。1600円という値段が安く思えてくるほど豪勢なので、お腹をすかせて行った方がいいだろう。焼き鳥屋の鳥せいもある。焼き鳥はもちろんのこと、なみなみと注がれた蔵出しの日本酒が絶品である。全身に染み渡るような味で、コンビニや居酒屋の日本酒を飲んで苦手だと感じた私も日本酒が好きになってしまった。玄屋というラーメン屋もある。ここの目玉は酒粕ラーメンで、酒の香りが立ち上ってくる味わい深いラーメンを楽しむことができる。

歴史も日本酒もご飯も楽しめる伏見、是非行ってみてはどうだろうか。(の)

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