【寄稿】熊本地震から考える地学教育(2016.5.16)

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4月14日に熊本県熊本地方で最大震度7を記録する M6・5の地震が発生した。さらに同15日深夜には、同じく熊本県熊本地方を震源とする M7・3の地震が発生した。発生直後に、私はTwitterで「東日本大震災の時にも本震の2日前にM7の前震が発生していたから、今回も南海トラフの大地震に警戒しないと!」というツイートを見かけた。あなたはこのツイートを見て科学的に正しいかどうかを考察し、周りの人に説明できるだろうか。

実はこのツイートは正しくない。今回の地震が内陸型地震であるのに対して東日本大震災は海溝型地震であり、発生メカニズムが異なる。つまり熊本地震は南海トラフの前兆とはいえないのである。とは言っても、わからない方も大勢いるだろう。この紙面では詳しい説明はできないため、自分で調べてみてほしい。こういった信憑性の低いツイートに、数千もののリツイートや「いいね」がついていたことに私は愕然とした。

私の身の回りでもこうした知識を持つ人は少なかった。数十人に海溝型地震と内陸型地震の違いを聞いてみたところ、ぼんやりとでも説明できたのは4分の1以下。このような結果が出るのは当然とも言える。教科書需要冊数から文科省が2014年に算出した履修率では、物・化・生の基礎科目が軒並み3分の2以上であるのに対し、地学基礎は29パーセント。日本での地学の履修率は圧倒的に低いのである。海外よりも自然災害が多い日本で科学リテラシーを改善するために、以下の2点から地学の履修率を上げることは不可欠だ。1つは国民全体の防災意識を高めるため。地震や火山などの自然災害を勉強として触れておくことで地震に興味を持ち、じゃあ自分の住んでいるところはどうなんだろうと調べることに繋がる。住民の防災意識を高めるという点で効果的なのである。もう1つは地球惑星科学分野の研究者を増やすため。履修者が少ない現状において、地学は大学受験では使いものにならない。国立大では多くの大学で地学を受けられるものの、私立では受験できる大学が数えるほどしか無い。私は京大を地学で受験したが、他に地学を選択できる併願校は早稲田大学くらいだった。高校で学習したことである科目に興味を持つケースはよくあることだが、地学ではそもそも触れる機会が他科目に比べて少ない。その結果地学に興味を持って研究者を志す学生が少なく、日本の地球惑星科学の研究者が増えない。そうすれば災害研究の発展も遅れてしまう。

この記事を読んでいる読者の皆さんにはぜひ3つのことをしてほしい。1つ目は自分の身の回りの自然災害について関心をもつこと。京大の本部キャンパスのある左京区であれば、花折断層と南海トラフの地震に警戒しなければならない。花折断層は 日本の断層帯では可能性のやや高いグループである。もし実際に花折断層が活動したら、京大では震度7の揺れが想定されている。また南海トラフで M8以上の地震が発生する確率は30年以内に60-70パーセント、50年以内には90パーセント程度以上。実際に南海トラフ地震が発生した場合、京都市左京区では最大で震度6弱の揺れを観測するおそれがある。こういったことをもう少し詳しく調べたり、地元についても調べたりして防災意識を高めてほしい。

2つ目は災害に関して誤った知識が流布されていたら、それを正すこと。あるいは自分が流布する側に回らないこと。科学的に根拠のあることを言っているかよく見極めて、災害に正しく警戒してほしい。内陸型地震と海溝型地震の違いは、少なくとも説明できる人のほうが多数派になってもらいたい。そのために周りの詳しそうな人に聞いてみたり、般教で地学を選択してみたりするのも手だ。

そして3つ目は地学を学習する人が少ないことに関心をもつこと。東日本大震災を受けて、文科省は地球惑星科学系の研究に予算を増やし始めたようだが、履修率を上げるための動きは未だ見られない。多くの人が関心をもつことで地学の履修率を上げるべきだという声を文科省に届けられれば、この記事の目標は達成されたといえるだろう。

私は地球物理学に興味のある一介の理学部生だが、この現状を広めたいと思い、僭越ながら執筆させていただいた。今回の熊本地震で被災された方に心からお悔やみ申し上げる。

(理学部3回生・瀧下恒星さん)

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