未知の言葉への挑戦 第三外国語特集(2016.02.16)

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大学に入れば誰もが履修しなければならないのが第二外国語。しかし、京大で学べる言語は実はまだまだある。第二外国語では飽き足らないという向学心に満ちあふれた京大生のために、京大で開講されている様々な語学の講義の担当教員による紹介と、実際に第三外国語を履修した編集員の体験記を掲載する。これから始まる新学期、新入生も在学生も、第三外国語に挑戦してみよう。未知の言語に触れることで、新たな世界が開けるかもしれない。(編集部)

西欧への窓、オランダ語

京都大学 人間・環境学研究科 教授
オランダ語担当 河崎 靖先生


日本におけるオランダ語の研究の歴史は長い。江戸時代の『ハルマ』や『訳鍵』といった蘭日辞書の編纂に始まり、近年、学習者のことを配慮した『オランダ語辞典』(講談社)やかなり本格的な『オランダ語辞典』(大学書林)などの辞書も出版されている。江戸時代に栄えた蘭学はいわば西欧への窓の役割を果たした。蘭学とは広義に、当時の日本人がオランダ語を通して学んだ西洋の学問一般のことを指す。医学をはじめとする西洋の学問はオランダ語を媒体として日本に取り入れられたのであった。わずか4000坪の長崎の出島は日蘭貿易の拠点であったのみならず、近代科学や思想が日本に流入する唯一の窓でもあった。

京都大学でも文学部で「オランダ語」が開講されている(週1回、初中級レベル)。基本的に少人数のクラスではあるが、法・経済や理系からの受講生もある。ゲルマン系の言語の中で「小さな国の小さな言語でありながらヨーロッパで小さからざる役割を果たしてきた」という自覚がオランダ人にはある。

オランダ語自体に興味があり、オランダの文化誌を含めて理解したいと思われる人たちに向いている授業だと言えよう。

ビルマ語への誘い

京大ASAFAS 非常勤講師
ビルマ語担当 本行 沙織先生


ビルマ語はミャンマー連邦共和国の公用語で、話者総数は4000万とも5000万とも言われます。ビルマ語は日本語母語話者にとって学びやすい言語の一つだと言われますが、それは日本語と語順が同じだということ、日本語と同じで助詞を使ってことばとことばをつないで文を作ることなど、文法に共通点が多いからです。一方で文字は独自のビルマ文字が用いられているのですが、これが丸っこくてかわいらしい文字で、この文字に惹かれてビルマ語を勉強したいと思ったという人もいるほどです。数字もアラビア数字のほかにミャンマー独自のビルマ数字が広く使われています。続いて発音についてですが、ミャンマーの近隣には例えば中国語やタイ語などのように声調を持つ言語が多くありますが、ビルマ語にも3つの声調があり、音の高さの違いで単語の意味が区別されます。また有気音と無気音の区別もあります。母音は7つで、日本語より2つ多くあります。

日本の国土の1・8倍の広さを持つミャンマーは、中国、ラオス、タイ、インド、バングラデシュと国境を接しており、135の民族が暮らしているとされています。公用語であるビルマ語を介して少数民族の人々とお話ができるということもビルマ語を学ぶ上での大きな魅力の一つだと思います。

文字さえ覚えれば大丈夫

ヒンディー語履修体験記

ヒンディー語というとマイナーな言語と思われるかもしれないが、人口の多いインドの中でも最大の話者人口を持つ公用語である。話者数の面から見れば、実はかなりメジャーな言語なのだ。

ヒンディー語学習の第一の難関は、文字を覚えなければならないところだ。デーヴァナーガリー文字という表音文字を使うが、見たこともない形をしているうえに、互いに似ている文字もいくつかあり、慣れるまでは苦労する。ただし、英語などとちがって一つ一つの文字が発音とほぼ完全に対応しているので、文字さえ覚えれば発音が分かるようになる。例外は多少あるが、すぐに覚えられる量だ。

次に面倒なのは後置格だ。後ろに後置詞が置かれると、前の名詞やそれにかかる形容詞が変化するというもの。後の語によって、前の語を先回りして変化させなければならないのは、書いたり話したりするときには少々厄介だ。

さらに、名詞に性があり、形容詞や動詞が性と数によって変化するのも難しい。形容詞はそれがかかる名詞によって変わるし、動詞の未来形、現在形、自動詞の過去形などもそれぞれ主語によって活用が変わる。しかも他動詞の過去形は主語ではなく目的語によって変わるからさらに話がややこしい。とはいえ、変化はどれも規則的でほとんど例外がないので、規則さえ覚えれば何とかなるところがある。他の言語に比べれば易しいといえるかもしれない。

日本語話者にとって、最も分かりやすいのが語順だ。おおまかにいうと主語、目的語、述語という順に並び、日本語とほぼ同じである。このため読み書きの際は前から順に言葉を置き換えていくことができる。そううまくいかない場合もあるが、初級の段階ではかなり楽である。

1年間履修した経験からすると、やはり最も難しいのは文字を覚えることだ。私の場合、年度の終わり近くなってもまだ覚えきれていない文字があって苦労した。また単語を覚える際にも少し注意が要る。名詞に性があることと、有気音と無気音など、日本語にはない発音の区別があることだ。初級の授業ではリスニングやスピーキングはしなかったが、書くときにも発音の区別ができていなければならない。単語を日本語の発音で覚えているとどちらか分からなくなるので、音よりも文字の形で覚えることをおすすめする。このように文字と単語を覚えるのが大変だが、逆にこれさえ覚えてしまえば文法は規則的なのであまり困ることはない。最初に文字を頑張って覚え、単語を一つ一つ確実に覚えていけば、あとはかなり楽になるはずだ。

初級の授業は進度もそれほど速くなく、少人数でゆっくりじっくりと学習することができた。少人数のため何度も当てられるので、きちんと復習しておかないと困ることになるが、第三外国語を学ぼうという意欲のある人には、割合とっつきやすい言語ではないだろうか。(雪)

第三外国語としてのサンスクリット語

京都大学白眉センター 特定助教
サンスクリット語担当 置田 清和先生


サンスクリット語は日本では梵語とも呼ばれる。比較言語学的にはインド・ヨーロパ語族に属し、ギリシャ語、ラテン語、スラブ語族、ゲルマン語族、ロマンス諸語と同一の起源に由来する。例えばbratar(サンスクリット語)、pharator(ギリシャ語)、frater(ラテン語)、brother(英語)は同語源である。サンスクリット語は現代インド諸語の基盤でもあり、ヒンディー語の挨拶「ナマステ(namas te)」はサンスクリット語で「あなたにお辞儀をします」という意味である。文化的にはヒンドゥー教、仏教、ジャイナ教における重要な教典の多くがサンスクリット語によって記され、広くアジア全体に重大な影響をもたらした。仏教を通じて日本語にもサンスクリット語起源の言葉が多く存在し、例えば「旦那」はサンスクリット語の「danapati(布施をする人)」に由来する。また、天文学、数学、医学、建築学などの分野でもサンスクリット語による文献が数多く記され、例えば我々が日常的に使うゼロの概念はサンスクリット語の「shunya(空)」に由来する。このようにサンスクリット語は幅広く奥深い影響を持つ言語である。洋の東西、文理の別を問わずいやしくも知の深淵を覗かんとする者は一度学習をお勧めする。

第三外国語の科目を履修するにあたって

京都大学で開講されている第三外国語科目は以下の通り(詳しくはシラバスを参照)。

全学共通科目:ラテン語A・B、ギリシア語A・B

文学部専門科目:ラテン語(2時間・4時間コース)、ギリシア語(2時間・4時間コース)、サンスクリット語(2時間・4時間コース)、スワヒリ語(初級・中級)、ヘブライ語(初級・中級)、ビルマ語(初級)、イラン語(初級)、チベット語(初級・中級)、アラブ語(初級・中級)、ポーランド語(初級・中級)、満州語、ヒンディー語(初級・中級)、オランダ語(初級・中級)、タイ語(初級)、インドネシア語(初級・中級)、ベトナム語(初級)、シュメール語(初級)

語学の授業は大半が文学部の専門科目である。文学部以外の学生が履修する場合、卒業単位に算入されるかどうかは学部によって異なる。総合人間学部や教育学部は一定数算入されるが、理学部や薬学部、医学部などや主に理系の学部では卒業単位として認められないことが多い。詳しいことは各学部の教務掛に確認してみよう。

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