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新型ブラックホール発見 銀河形成の解明に手がかりか

2007.08.01

京都大学理学研究科の上田佳宏准教授(X線天文学)は7月30日、新しいタイプの活動銀河核(ブラックホール)を世界で初めて発見した、と発表した。塵やガスに深く覆われ提灯のような形をしている。京大・愛媛大・NASAの共同チームによるこの研究成果は8月1日づけの「アストロフィジカルジャーナルレターズ」誌に掲載される。

活動銀河核とは、太陽の100億~100兆倍ものエネルギーを放射している銀河の中心核のことで、その正体はガスを飲み込んで成長している巨大なブラックホールである。銀河形成に重要な役割を果たしており、これまでの標準的なモデルでは周囲を「トーラス」という物質に囲まれているとされる。トーラスはガスや塵できており、ドーナッツの形状をしていると考えられていた。だが今回、研究チームはトーラスの中心の穴が狭く深い新型の活動銀河核を発見した。銀河形成とブラックホール成長の解明に手がかりを与えると期待されている。

活動銀河核はX線を含むさまざまなエネルギー値をもつ電磁波を放射しており、これまでも活動銀河核の放出するX線を観測することで多くの活動銀河核が発見されてきた。しかしこれまでのエックス線探査では、検出できるX線がエネルギーの低いものに限られていた。エネルギーの低いX線は透過力が弱く、観測方向にX線を遮る物質が多くある活動銀河核の発見は難しかった。

今回の研究では「硬X線」観測という新しい手法が用いられた。エネルギーが比較的高く透過力の強い硬X線の検出は、物質に深く囲まれた活動銀河核の発見を可能にした。実際、2年前に打ち上げられたNASAの衛星「スウィフト」による過去最高感度の硬X線探査によって、多数の未確認天体が新たに発見されてきた。研究チームはそれらの中から2つの天体を選び、その正体を明らかにすべく日本のX線衛星「すざく」で幅広いエネルギー範囲のX線の観測を行った。

観測結果を解析したところ、その天体のうちひとつの正体がこれまで未発見だった活動銀河核であり、またその銀河核から放出されるエックス線のうち2電子ボルト以下の低エネルギーX線が極端に少ないという特徴を持っていることが明らかになった。これはこれまでに知られている活動銀河核にはない特徴であった。

低エネルギーのX線は、トーラスの隙間から洩れ出て散乱したものと考えられており、今回この散乱成分が極端に少なかったことは、トーラスの開口角が通常の活動銀河角よりも非常に小さいということだと考えられる。これにより、深い谷埋もれた新しい型の巨大ブラックホールの存在が示された。

《本紙に写真掲載》