春秋講義開講「海を考える」(2015.09.16)

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京都大学公開講座「春秋講義」が今秋も開講されている。1988年に始まるこの企画は、京大が学術研究活動を通して培ってきた知的資源を学内外で広く共有することが目的。毎年春と秋に行われており、それぞれ異なるテーマが設定される。

今回のテーマは「海を考える」。海に関する研究の経緯や現状についてが主な内容となり、全3回で構成されている。第1回目が9月5日、時計台記念館百周年記念ホールで開かれた。タイトルは「ジュゴン、ウミガメ、オオナマズを追いかける――希少水圏生物の保護と共存」。京大フィールド科学教育研究センターの教授・荒井修亮氏が講師を務めた。

タイトルにある3種の生物はいずれも絶滅の危険性が高く、ワシントン条約によって保護対象に指定されている。しかし、有効な保護策を講じるには、まず彼らの生態を知る必要があるという。そうした現状に応えて荒井教授は、バイオロギングという最先端の調査方法を用いて絶滅危惧種の生態研究にあたっている。これは、生物の体に発信器やカメラを付けるなどして、その行動を逐一記録するというものだ。本講義では、ジュゴン、ウミガメ、オオナマズそれぞれに対するバイオロギングの様子が、豊富な映像資料を交えながら紹介された。

ジュゴンは熱帯の浅い海に分布し、沖縄にもわずか3頭ながら生息が確認されているという。しかし、残ったその3頭も、辺野古への基地移設によって生存圏を奪われようとしているのだと荒井氏は語る。そこで紹介されたのが、ジュゴンの鳴き声や海草を食む音を拾って追跡するというバイオロギングの手法。会場では、録音装置の設置場所を決めるために空中からジュゴンを探す目視調査の映像が公開されたあと、録音されたジュゴンの鳴き声や咀嚼音も流された。最前線での研究の様子を伝える貴重な資料の連続に、来場者からは感嘆の声がこぼれた。

美しい甲羅を目当てとして乱獲され、今では希少な存在になってしまったというウミガメ。彼らを保護しようとする活動が、国際的な漁業問題に発展することもあったという。荒井氏が例に挙げたのは、ウミガメ混獲のおそれがあるタイ国のエビ漁業に対し、アメリカが輸入停止を通告したという事件だ。これを受けてタイ国が乗り出した、甲羅に水中カメラや発信器を付けてのバイオロギングの経緯が、教授の口から語られた。会場のスクリーンには、ウミガメの視点で撮影された美麗な海中の風景が映し出された。一方、発信器調査がウミガメの広大な回遊経路を明らかにしたことによって、保護には東南アジア各国の団結が不可欠だという難しい問題も浮上してきているという指摘がなされた。

東南アジアのメコン川流域に棲むメコンオオナマズは、最大体長3㍍、体重300㌔を誇り、現地では「プラー・ブク(巨大な魚)」と呼ばれているそうだ。しかし、絶滅が危ぶまれるようになってもその生息域が詳しく掴めていなかったため、バイオロギングが実行されることになったという。その方法は、腹の中に発信器を埋め込むという衝撃的なもの。体表に設置するよりも、事故や対象の成長によって外れてしまう可能性が低いのがメリットだという。実際に手術をしている場面の映像も流された。メコンオオナマズが川を泳いだ経路や、湖において彼らが潜る深さの法則性などの研究結果が、統計資料を示しつつ解説された。

春秋講義の今後の予定としては、9月26日に京大工学研究科の准教授・後藤忠徳氏が開講する「深海の調査と人の暮らし――地震・資源・生命調査の最前線」がある。(賀)

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