森林科学公開講座 「木材知ってますか?~森林から先端材料まで~」(2014.11.16)

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多様な森林・木材を知る


11月8日、京都大学農学部総合館で公開講座「木材知ってますか?~森林から先端材料まで~」が開催された。講師は、神崎護・農学研究科教授、長谷川尚史・フィールド科学教育研究センター准教授、藤井義久・農学研究科教授、阿部賢太郎・生存圏研究所准教授、吉岡まり子・農学研究科講師の5人。「木材の利用」をテーマに、一般市民に向けてそれぞれ講演した。

始めに、神崎氏が東南アジアにおける木材生産の歴史と現状を解説した。第二次世界大戦後、東南アジアの国々にとって外貨を獲得するには、木材を輸出し伐採後の土地を農地化することが手っ取り早かった。そのため広大な熱帯雨林が無計画に伐採された。高度経済成長期の日本が大量に木材を輸入していたことも要因の一つだ。結果として土砂災害や洪水被害が増加し、生物の住みかも大幅に減少したという。こうした流れをふまえ、神崎氏は残された森林の理想的な管理や利用について説明。インドネシアでの取り組みの例を紹介したうえで、「林業の様々な面に経済的な価値を創出し、より幅の広い産業に変革していくべきだ」と語った。

長谷川氏は「森林資源利用の歴史と将来性」と題し、日本の森林の役割や課題について講演した。森林は災害の予防や、木材・食料の供給だけでなく、各地域の文化や信仰の形成にも役割を果たす。一方で昭和40年代以降、多くの森林で管理が放棄されてきた。産業構造の変化により林業の採算性が大きく悪化したためと長谷川氏は指摘する。環境問題や防災の重要性から、「数百年先を見越しながら、社会が森林とどう関わっていくべきかを考えなくてはならない」と結論づけた。

藤井氏は奈良時代の寺院や江戸時代の京町家など、縄文時代から現代にいたるまでの各建築物に木材がどのように利用されてきたのかについて説明した。現代の木材利用の特徴について、長さや太さを切りそろえるなど、木材を均質化して利用してきた点にあると指摘する。「それぞれの木材がもつ個性を重視し、そのまま生かすことにも意味があるのではないか」と、木材利用の新たな方向性を提示した。

阿部氏は、木材などから得られる100ナノメートル以下の繊維・セルロースナノファイバー(CNF)を紹介した。鉄の5倍程度の強度を持ち、同じ強度を持つ他の材料と比較して格段に軽いことが特徴だ。「100㍍を超す樹木が巨大な体を自ら支えることができるのは、この強さと軽さのおかげ」と阿部氏は説明する。他の樹脂と混ぜ合わせると強く軽い材料が得られ、自動車のボディーなどの素材として応用が期待できる。「CNFをいかに使いこなすかが今後の課題」と語った。

このCNFを、リチウムイオン電池の材料の一つとして利用したのが吉岡氏。電池にはプラスとマイナスの両極があり、セパレータという膜によって仕切られている。セパレータの材料にCNFを混ぜると、耐熱性を上げることができるという。吉岡氏はCNFのこうした有用性を強調した。

森林科学公開講座は、農学研究科と生存圏研究所の共催。森林や木材に関する諸問題を市民に理解してもらうことを目的として、1997年から毎年開催されている。(北)

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