〈イギリス語学研修紀行〉行ってみたいな、よその国(2014.11.01)

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長期留学をする程のモチベーションはないが、海外への憧れは否めない。そんな記者が、敷居の高さと気恥ずかしさから二の足を踏んでいた語学研修に参加することになった。この記事では、その準備段階における手続きの流れや語学学校での生活を紹介したいと思う。(易)

さあどうしよう、夏休みを持て余した。9月のスケジュールが埋まらない。このままでは大学2回生の夏を空費してしまう、危機的状況! ……そうだ、せっかくだから海外にでも行こう。ずっと憧れていたイギリスへ。ねえお母さん、私ロンドンに行きたいと思うんだけど。うん、一週間くらい。観光で行くんだから十分じゃない。ええっ、何を呑気なこと言ってるのって。グローバルな経験? 圧倒的成長? つまり、英語の勉強をしに行くなら金銭面のサポートも検討? ……ええ行きます、みっちり1カ月間、行って参りますとも。

何とも情けないいきさつではあるが、ともかくこうしてロンドンでの短期語学研修が決まったのであった。

出発までに


いざ国外脱出、と勇んで準備に取り掛かったものの、ロンドンには数えきれないほどの語学学校があるらしい。天下の大英帝国様だもの、そりゃそうだ。でも学校のデータを独力で集めたり手続きをしたりする間に挫折してしまいそう。そう思った私は、とりあえず時計台生協の旅行センターで斡旋会社の説明を聞くことにした。

旅行センターで「イギリスに行くならば」と勧められたのは、現地の私設学校との仲介のみを扱うエージェントと、世界各地に直営の学校を展開する企業の2つだった。結局おじさんの対応が熱心だった前者で申し込むことに決めたのが7月中旬のことだ。

さて、次に待つのは語学学校選びである。エージェントと提携する語学学校の特色を説明してもらい、候補を絞ってゆく。私が選んだのは、あのハロッズに近いサウスケンジントンのオシャレな高級住宅街にある学校だ。深く考えずにファッション感覚で選んだのだが、地理的にかなり不便だった。別に自分が高級住宅街にホームステイできるわけでもないので、特に拘りがなければ中心部の学校を選ぶのが理性的な判断であると思う。

日本を発つ前にしておくべきだったと後悔したことと言えば、国際学生証の取得だ。これがあれば身分証明を求められた際に大切なパスポートを出す必要がなかったし、何よりかなり多くの観光地やお店で学生割引が利いた。

ホームステイか、寮か


短期留学の場合、ホームステイをするか学生寮に住むのが一般的である。

まず、私が選んだホームステイについて。ステイ先についてこちらからペットや子供の有無以上の細かい条件は提示できず、一方的に選ばれたホストファミリーの名前・住所・家族構成などを書面で知らされるだけだった。なので、行ってみるまで実際の状況はほぼ分からない。

例えば私の場合、家の周辺の治安について日本のエージェントに尋ねても「よく分からないけど、地図を見た感じ普通の住宅街」という煮え切らない返事。ドキドキしながら現地に到着した際に、なにやら胡散臭い(十三を思わせる)雰囲気を肌で感じ、不安が的中したことに気付いたのであった。移民が多く、犯罪率も高い地域であったようだ。

またロンドンでは、留学生を家族の一員として迎え入れるというよりは、下宿屋さんのようにビジネス感覚で受け入れている家庭が多い。私がお世話になったのもそういった家庭だったので、こちらから特に呼びかけない限りプライベートに立ち入ってくることはなかった。

とはいえトラブルが起こった際に心強いのは確かで、慣れない食生活に胃腸をやられた時には、薬を貰ったりレモネードを作ってもらったりした。異国の地において頼れる人がいるという安心感は何にも代えがたいものがある。

一方、世界各地から英語を勉強しに来た人が集まる学生寮では、似た境遇の学生同士仲が深まりやすいと聞いた。共用のキッチンでそれぞれ自国の料理を作り、夕食をシェアするのだとか。

何より羨ましく思ったのは、時間的に自由度が高いことだ。学校に近い場所にあることが多いので、夜遅くまで友達と遊んでいてもすぐに帰ることができるし、ホストファミリーに気を遣うこともない。しかしその一方で、ネイティブ・イングリッシュを聞く機会がかなり少なくなるというデメリットは大きい。

ロンドンに到着


現地の8月31日にヒースロー空港に降り立つ。初めはただただ圧倒されるばかり。
語学学校では、初日にクラス分け試験を受ける。文法と語彙のペーパーテストの結果は良かったものの、面接で「スピーキングとリスニングがさっぱりだし、とにかく自信が持てないの」と訴えたところ、全7クラス中の真ん中に配属された。

クラスの構成メンバーは大学生を中心に、高校生やスキルアップを図る社会人、退職して悠々自適のおじいちゃん……様々な国・地域からやって来たあらゆる年齢層の人と共に机を並べた。聞く所によると上級クラスほどイタリア人が多く、初級クラスほど日本人が多い傾向があるのだとか。ちなみに1週間単位でメンバーは入れ替わる。つまり毎週金曜日には誰かがクラスから去り、また次の月曜には新入生がやってくる。機械的に出会いと別れが繰り返される、なんとも無常な世界なのだ。

興味深かったのは、国籍を問わず女性が非常に多かったことだ。私は文法クラスと英会話クラスを受講していたが、両クラスとも常に半数以上は女性だった。英会話クラスに女性しかいなかった週はそれぞれの国のファッション、恋愛事情、女性の社会的地位をテーマに語り合うなんてこともあった。「女性として仕事をすることに不安はない」と言い切るヨーロッパ女子たちを、韓国人の子とともに羨んだものである。

平日は13時に授業が終わり、放課後は一人で市内観光を楽しんだり、友達と公園を散歩したり。夕方に待ち合わせて、夜中までパブでお喋りする日も多かった。週末には湖水地方やグリニッジなど、少し遠出をした。

行ってみよう やってみよう


そういえば、旅行センターの説明会で短期留学を成功させるコツを尋ねると、「些細な目標を一つだけ達成すること」と言われた。まず一つ何かを成功させると、心に余裕ができる。それに初めから大志を抱いて臨まなくとも、解決しなければならない問題は現地でいくらでも生じる。深夜バスに乗れない、デリで注文ができない、何より友達を作れない……かつてない無力感に苛まれる中で、できないことを1つずつできるようにしていく道のりには、中々味わいがたい原始的な喜びがあった。

果たしてたったの1カ月で語学力が飛躍的に向上したかと問われると、答えはNOである。しかし、何でも自分で解決せざるを得ない状況に追い込まれたことで、誰にでも話しかける度胸がついた。結果として仲の良い友達もできた。

語学学校の大きな特徴は、当然のことながら全員が英語を勉強中だということだ。にもかかわらず、特にヨーロッパ出身者は流れるようなスピードで英語を話すので、初めは引け目を感じてしまった。心細かった最初の1週間。しかし私はその間にBBCドラマ『SHERLOCK』のロケ地巡りを完了させ、「とりあえず留学成功」の免罪符を手に入れた。これで肩の力が抜け、徐々にクラスに溶け込むことができた様に思う。

そして、注意して聞くと彼らの英語には文法上の誤りが多く、語彙も自分と大差ないが、それを互いに注意し合いながら会話しているのだと気づいた。成る程臆する必要はないのだと分かってからは、むしろ相互理解に必要な会話は惜しむべきでないし、格好をつけて殻にこもるべきではないと思えるようになった。

上手くはない英語で互いの生活を語り、その違いに驚き笑い合って、意外と同じ悩みを共有できたりもする。記念の”selfie”を撮って、互いの国での再会を誓ってハグして、キスして、サヨナラする。思い出すだけで恥ずかしくなる日々だけれど、案外悪くない夏だったのではないかしら。

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