〈新刊書評〉山極寿一『「サル化」する人間社会』(2014.08.01)

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ゴリラに見る人間の原点


本書は霊長類学の権威である筆者が、長年のフィールドワークの経験を元に、「序列関係が存在せず、したがって勝ち負けも存在しないゴリラ社会」と「厳密な序列関係を形成し、そのルールの中で個体の利益を最大化するサル社会」を分析することで、家族の崩壊と個人主義化が進みつつある現代社会を「サル社会」と批判し、ゴリラ社会に見られる社会的平等性や人間固有の特性である同情や集団への帰属意識、家族といったものの重要性を強調するものである。

第二章では、ゴリラが勝ち負けを作らないこと、また内省力があることが取り上げられ、遊ぶ能力があることも示されている。この遊ぶ能力は、本書の中で最も関心を集める部分だと思われる第三章「ゴリラと同性愛」でも重要となる。第三章では、オスのみの集団内で観察された同性愛を取り上げている。同性愛は優劣を意識するサルには見られないが、対等な関係を持ち、相手への共感能力があるゴリラは、遊びの延長としての性行動に発展しやすいのだそうだ。遊びも性行動も、相手が何を求めているかを汲み取る能力がなければ成立しない。相手によって自分を変える行為を遊びとするならば、性行動、特にオス同士の性行動も相手によって自分がメスとして振る舞うようになるという意味でまた同様である。ここで興味深いのは、メスとして振る舞うことができるのは、若いオスに限られるということである。ゴリラは大人になると生物学的な性別に則った行動しかできなくなるという点で、大人になっても文化的に性を克服することのできる人間は、より自由度が高い動物と言えるだろう。

筆者は本書の中で人間そのものや社会に関する考察を広範にわたって行っている。しかし、文章自体は平易で読みやすく、単にゴリラについて知りたいという人にもおすすめである。(奥)

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