〈映画評〉『祇園祭』(2014.08.01)

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祇園祭の「復活」描く


今年度の祇園祭では7月17日の山鉾巡行に加え、およそ50年ぶりに24日の後祭とそれに伴う山鉾巡行が行われた。「千年以上にわたって継承されてきた前祭・後祭の習わしを、後世に正しく伝えていくため」というのが後祭復活の理由らしい(祇園祭の公式HPより)。

さて、古来の歴史通りに二度の巡行を復活させた山鉾が京の街をにぎわせた7月の17日と24日、三条高倉の京都文化博物館フィルムシアターでは祇園祭自体の「復活」を扱った映画『祇園祭』が上映された。話の大筋は以下の通りである。

室町時代後期、京では農民による土一揆が苛烈を極め、町民たちは大きな被害を受けていた。織物職人の新吉は、武家の細川氏の依頼に応じて他の町民らと共に山科へと農民討伐の遠征に繰り出すが、そこで彼は農民の悲惨な暮らしを目の当たりにし、本当は町民も農民も武士に利用されているだけなのではないのかと疑い始める。新吉は町民と農民の団結の象徴として、応仁の乱以後長らく途絶えていた祇園祭の復活を決意するのだが……。
京の町民による祇園祭の復活という本作のストーリーラインは、応仁の乱以後三十年以上にわたり祇園祭が中止に追い込まれていたという実際の史実を元に構成されている。しかし、作中で頻出する農民・被差別民に対する同情的視点や支配階級として新吉の前に立ち塞がる武士の悪辣さの描写からはどこか戦後民主主義的なリベラル色が感じられ、本作の公開年(1968年)における社会的思想が思いの外深くフィルムに刻印されている様を見て取ることができる。

俳優陣の豪華さも特筆すべき点の一つだ。主演の中村錦之介、あやめ役の岩下志麻といったメインキャストの充実ぶりはもとより、渥美清、美空ひばり、高倉健などのそうそうたる面子が揃ってセリフの少ないチョイ役で起用されていることにも驚きを隠せない。また本作前半では、志村喬演じる老獪な町民の長、恒右衛門が、三船敏郎演じる馬借のリーダー、熊左を待ち伏せ戦法で迎え撃つ場面があるが、この時の志村と三船の風貌と演技は、それぞれ明らかに『七人の侍』出演時におけるそれであって、少なくとも黒澤ファンならばこの戦闘シーンから「勘兵衛(志村喬)VS菊千代(三船敏郎)」という夢の対決を想起せずにはいられないだろう。素晴らしい配役である。

ストーリー、キャストと実に見どころの多い映画『祇園祭』であるが、本作は権利関係の都合でDVD、VHSなどのソフト化や名画座での上映が一切なされておらず、京都文化博物館フィルムシアターで毎年祇園祭の時期に行われる上映が本作鑑賞の唯一の機会となっている。正に「幻の名画」である。(47)

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