インタビュー

宮下哲志 新入生キャンペーン実行委員長 「それでいいのか!京大生!!」

2008.03.16

70,80年代の若者はシラケ世代と呼ばれたらしい。その時代の終わりに生まれた人間なので、当時の様子は知る由もないが、三無主義といって無気力、無責任、無関心を表していたそうだ。そういう名前をつけるのは、下の世代をひとくくりに見下して、優越感に浸りたいだけに違いない。そう個人的に思っている。現状を嘆くのではなく、現状に対して何か行動を起こすべきだろう。

20年たった現代、シラケ世代以降、特に若者が盛り上がるような事件もなく、そういう意味では今の世代も三無主義の延長に当たるのだろう。だが、京大でこの状況を変えようと行動を起こした男がいる。京大新入生に対して、講演などのイベントを行い、京大に、ひいては日本の若者に熱さを取り戻そうと試みる、新入生向けキャンペーン実行委員長・宮下哲志さんに話を聞いた。(幸)

—このキャンペーンを始めるに至った経緯をお聞かせ下さい。

僕は高校でやってたアメフトがやりたくて京大に入ってきたんです。なぜ京大かっていうと、京大ってアメフトにおいてすごく不利な状況にあるんです。私学とかは、学校自体がスポーツに力を入れるので、お金も出すし、スポーツ推薦で選手も確保できるんです。でも、国立大である京大にそういうものはない。そういう意味で相対的に不利なんですよ。そんな不利な状況でも何度も日本一になっている京大、かっこいいなぁと思ってたから、京大に入ってきたんです。それで大学生活は基本的にはずーっとアメフトですね。

で、なぜアメフトの話かというと、アメフトの勧誘をする中で、自分が抱く理想の京大生像と今の京大生との違和感をおぼえたからなんです。

アメフトってかなり激しく勧誘やるんです。知ってもらわないと魅力はわからないし、人数たくさんいたほうがプラスになる事は間違いないので、ほんとにたくさん勧誘するんですよ。

そうやって勧誘をしていると、新入生とも接する機会が多いんですけど、なんかね、最近、京大生元気ないんじゃないのかなぁって感じたんです。

具体的に言ったら、大学で何かしたいことあるのって新入生に聞いてみたりしても、何かやってやろうという気概を持って京大に入ってくる人が全然いないんですよ。アメフトじゃなくても、体育会とか文化系のサークルでなにかやりたいことがあるとか、勉強してノーベル賞とるとか、あってもいいと思うんです。

せっかく京大に入ったんだから、悪い意味でのエリート意識とかではなくて、いい意味でプライド持って、京大だからこそできることをやろうとする姿勢って必要なんじゃないかなと。

京大入るのって大変だから、入ったことに満足してしまって、入ったらできるだけ遊んでやろう、楽して適当にアルバイトして、そんなに忙しくないサークル入って、楽しく過ごしていいとこ就職できればそれでいいや、そういう人があまりにも多いんじゃないのかな、と勧誘してて感じたんです。

それでは何か情けないな、そういうことでいいのかな京大生、と思ってこういったキャンペーンをやろうと思ったんです。

—キャンペーンを始めてみてどうでしたか。

自分の思いつきではじまったキャンペーンだったので、まずいろいろなところで話を聞いてみることから始めました。他の体育会や文化系サークル、教授とかいろんな人と話をしてみたんですが、結構みんな自分と似たようなことを思っていることに気づいたんです。

例えば、農学部の環境系サークルの人と話した時は、農学部の自治が弱くなってきていて、ボックスの建て替えでも学生のボックスが減らされたりしてしまうという話を聞いて、そのことにその人はすごく憤っていたんですけど、でもそういうことに対して何にも思わない京大生が多いんです。

京大と言えば自由の学風じゃないですか。必修科目が多くなってくるとかそういうことって自由の学風の侵害だと思うんですよ。そういうことにもっと関心を持っていいと思います。

—自由の学風をどう考えますか。

自由って、僕は自分で自分を律して本当にやりたいことに打ち込むことだと思うんです。自由って、確かに何をしてもいいんですが、その分、自分次第でいいようにも悪いようにもなる。自堕落に過ごそうと思ったらいくらでも自堕落になってしまう。でもそういうのって違うと思うんですよ。せっかく自由の学風の京大に来たんだから、自由の意味をよく考え、その上で自分が何をしていくのか決めてほしいですね。

—このキャンペーンの具体的な目的は何でしょうか。

一番やりたいことは提案です。僕らが提案する京都大学の学生生活の送り方、みたいな。ちょっと押しつけがましいかもしれないですけれど、いろいろなことを知って、自分が打ち込めることを見つけてほしいんです。

新入生って入試っていう目標に集中してきたから、あんまり先のこととか見えてないと思うんですよ。だから、例えば僕らが学生生活を送ってきた中で、こういうふうに過ごした方がいいんじゃないのかとか、あるいはOBの人とかに話を聞いて、OBの人は社会に出て、大学生活のこういうことが役に立ったとか、逆にどういう風に過ごしておけばよかったとか、新入生が幅広い世代の経験をもとに、長いスパンでものを見られるように学生生活の提案をしていけたら、と考えています。

—京大生は変わってきたんでしょうか。

普通になってきたんじゃないですか。人が右なら左と言ってしまうひねくれたところが良かったんだと思います。最近の傾向は、普通というか流されてしまいがち。

—その変化に対してどう対応していくべきでしょうか。

難しいですね。体育会のクラブでもサークル化していくところもあるようです。つまり、楽しくやって、練習は自分のしたい時だけでよくて、そういう軽い雰囲気にすることで部員を集めていくといったような感じですね。

でも、そういうのって違うんじゃないかなって思うんですよね。そこに単に迎合してしまうのは良くない。かといって、今までこうだったから、こうやらないといけないんだ、っていう押しつけもまた何か違う。どうにかして新しい形を見つけていかないといけないんじゃないかなぁって思ってはいて、このキャンペーンがその新しい形への一歩になれば、と考えています。

—このキャンペーンは来年度からも続けていこうというビジョンはあるのでしょうか。

続けていくつもりです。後輩たちもそのつもりで動いてくれていますし、僕も来年卒業してもなんらかの形でかかわるつもりです。

具体的には来年以降の活動に生かすため、今年の新入生にアンケートをとったりして、キャンペーンを通してどういう変化があったかや、実際どういったように過ごしたかなどを調べたりすることを考えています。今年度は4、5月に集中してイベントを行う予定ですが、来年以降は、一年を通して活動し、アンケートの結果や意見・要望などを見つつ、時節ごとの新入生のためになるイベントなどを企画していく予定です。

それから新入生キャンペーンという名称ですが、活動対象を新入生に限定してしまっているので、これはあくまで仮の名称で、いずれは変更予定です。

今年のイベントでも一部は2回生以上も対象としていますし、そのうち京大の在校生にも広げるような活動にしていきたいと考えていますし、もっというと、京大以外の大学にも広げていきたい。もっともっと大きいこと言っちゃうと、ここから日本の若者を変えていきたいな、というところまで野望としてはあります。

—ありがとうございました。

《本紙に写真掲載》