春秋講義 食生活史への新たな視角 人文科学研究所・藤原辰史准教授(2014.04.16)

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4月9日、百周年時計台記念館・百周年記念ホールにて、人文科学研究所の藤原辰史准教授による春秋講義「20世紀日本の食生活史――残飯、牛乳、フードコート」が行われた。春秋講義は、京大の学術研究を内外の人々に広く発信することを目的として、毎年春と秋に開講される公開講座である。今春は「日本の食を考える」をメインテーマに掲げ、初回である本講義を含め全3回の講義が開講される。

藤原氏は、20世紀における日本の食生活のめまぐるしい変貌が、洋食化の進展や調理器具・技術の進歩など、一言で語られてしまうことも少なくないと提言した。そこで、20世紀の食生活史を語るにおいて見逃されがちな面にもスポットを当てることで、さらに21世紀の食の可能性に踏み込もうと試みた。

まずは講義の導入として、一般的に語られる「動物性タンパク質」「給油的食事」「栄養学的食事」の席巻と、「共食から孤食へ」の4つの側面を示し、さらに時代を追って20世紀日本の食の変遷とその背景を概観する。その後、食生活史をとらえる新たな視角を手に入れるという講義の目的に則り、副題である残飯・牛乳・フードコートの3つを例にとってさらに深く切り込んでゆく。

現在日本で年間1人当たり約1キロの残飯が廃棄されていることを問題視する藤原氏は、かつて作家・松原岩五郎が1892年に『最暗黒の東京』で伝えた、貧民窟の「残飯屋」を紹介した。そこでは、士官学校や繁華街といった近郊の大規模消費地で余った食事が二束三文で販売されていたという。藤原氏は、既に調理が済んでおり燃料や水を必要としない残飯は、現代においても再利用の可能性があると述べた。

次に、食生活の変化の象徴として牛乳が取り上げられた。戦後、牛乳の消費量は急激に伸びたが、その立役者となったのが雪印乳業株式会社である。本来同社はデンマークを理想郷と仰いで1921年に設立された。しかし、日本人は次第にアメリカ的生活スタイルへの憧れをつのらせる。そこで同社はアメリカへの憧れを意識した広告を用いて洋食に不可欠な乳製品の販売を促進し、食の欧米化を加速させた。また藤原氏は、写真家・英伸三の作品を紹介しつつ、乳価の横ばいや牧草の残留農薬問題など、見逃してはならない暗い側面も生まれていることをアピールした。

最後に、1990年代後半からショッピングセンターの一角に作られはじめ、次第に客を引き付けているフードコートという場所の特殊性に注目した。多様化した食の嗜好や形態への対応、敷居の低さ等がその魅力だろうと分析する。また、フードコートを外食と集団給食の中間に位置づけ、その「好みの食を共同で食べる」という新しい形式を評価した。

藤原氏はまとめとして、20世紀の食生活史を語る際には残飯をはじめとする未開拓地の存在を認識する必要があること、食事とそれにまつわる物語や背景は不可分であり、食の欧米化は欧米流の生活スタイルや思想の浸透と同時に進行したことを強調した。加えて食べる「形式」、つまり「誰とどこでどうやって食べるのか」に注目することを促して講義を終えた。(易)

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