書評『世界文学を読みほどく』(2014.04.01)

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羅列化する世界観

本書は2003年9月に京都大学文学部で行われた、小説家の池澤夏樹による講義をまとめたものである。この講義は、最初の2回で「小説とは何か」を概説し、次の11回で、19、20、21世紀の十一の小説をほぼ年代順に一つずつ紹介、最後の1回でまとめている。作品紹介は、ストーリーを追いながら時代背景や作者、文学史的意義に言及しつつ行われる。

紹介される11の小説は、スタンダール『パルムの僧院』やドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』、メルヴィル『白鯨』、ガルシア=マルケス『百年の孤独』などであるが、それらはメルヴィル『白鯨』を境に世界観によって大きく二つに分けることができる。「一つは樹木状の分類項目に従う、つまりディレクトリのある、例えば動物・植物の分類表のような形。(中略)もう一つは、単に物がひたすら並んでいるだけの羅列的な世界」。『白鯨』より前の小説は前者の、以後の小説は後者の世界観を反映している。例えば『白鯨』より前の『パルムの僧院』はパルム公国での貴族の恋物語、『カラマーゾフの兄弟』は、神や理性、情欲などをテーマにした思想性の強い作品であり、起承転結がはっきりとしている。対して『白鯨』は一言でいえば「鯨の百科事典」である。鯨にまつわる森羅万象を描こうとしている。『百年の孤独』は民話という短い不思議な物語群が織り成す小説である。これらの物語では因果関係は重視されず、出来事が羅列的に提示される。そして池澤は、小説がディレクトリ(構造)を持つものから、それを持たぬ羅列的なものへ変化したのは、世界の変化を反映してのものであるという。「(革命、宗教、立身出世などの)大きな物語がかつてはあった。(中略)そういうものがみんな失われて、言ってみればわれわれは、壊れてしまった大きな物語の破片の間をうろうろしている、それが今なのではないか」。

世界観の変化を知ろうとするとき、学問的に知るのが一つである。が、本書が提案するように物語の中に入ってそれをした場合、深い実感が伴うのではないだろうか。本書で紹介されたものを始めとして様々な文学を読んで、世界観の変化を実感したい。(智)

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