〈京都 乗合バス紀行〉京都バス32系統 花背線編(2013.12.01)

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京都市とその周辺には実に様々なバス路線が存在する。京都市には多くの観光客が押し寄せるが、市内鉄道がそれほど発達していないためにその輸送は主にバスが担うことになる。そのため、洛バス(京都市バス100・101・102系統につけられた愛称)のような観光路線がいくつも存在する。また、通勤・通学にも大きな役割を果たしており、朝の西大路通りなどは満員バスがひっきりなしに行き交う。さらには市民の移動にも重宝されており、京都駅と百万遍を結ぶ市バス17系統などは京大生にはお馴染みではなかろうか。

そんな京都市内を走るバス路線の中から、今回は京都バス32系統を紹介する。この路線は花背線とも呼ばれ、出町柳駅前から左京区の北端に近い広河原までを結んでいる。この32系統は京都バス10統(注1)と並び、京都バス有数の長距離路線だ。さらに峠越え区間を抱え、狭隘道路を走行するため、乗車時間では京都バス最長路線となる。終点の広河原には京都市内唯一のスキー場があり、沿線にも様々な施設が存在する。また京大にも少し関係のある路線かもしれない。ここではいくつかの沿線施設とともに、このバス路線を紹介する。(通)

~鞍馬の奥、市内唯一のスキー場へ~


今年の春、私はこのバス路線に乗車し、大きなバス車両での花背峠超えを経験し、その光景が強く印象に残った。この路線では一部で小型バスが用いられるが、多くは中型バスもしくは大型短尺バス(注2)で運行される。どの車両が運用されるかは乗車当日のお楽しみだが、私が好きなのは中型ワンステップバスだ。本来市街地を運行するはずの中型ワンステップバスで、急勾配や複数のヘアピンカーブを持ち、路面状況の悪い山道を走行する体験はなかなか出来るものではない。バス車両がカーブを曲がる様子を、ワンステップバスの低い視点から見るのは、ツーステップバスの高い視点の場合とは迫力が違う。とはいえ、大型短尺バスは現在生産が中止されており、これから数を減らす運命にあるという点では乗っておくべきだといえるだろう。

出町柳~市街地


この路線バスが発車するのは叡山電車出町柳駅改札口から川端通へ向かってすぐのバスロータリーだ。運行本数について、出町柳駅前からは毎日3本運行されている。逆に広河原発は変則的で、平日は4本、土休日は朝の便が運行されないため3本となっている。2013年12月現在で、出町柳発は7時50分・10時00分・14時50分だ。バスは出町柳駅前を出ると北大路駅を経由して京都産業大学前へ向かう。出町柳駅前から京都産業大学前までは他にもいくつかのバス路線がある区間で、32系統でも便によっては混雑するが、この区間を外れれば乗客も減ってくるはずだ。

京都産業大学前を出ると断続的に狭隘区間が続くようになる。それでも道の両側には建物が建っており、単に道路の狭い住宅地と何ら変わりない。この程度ならば他に奈良交通の押熊線(注3)などの例がある。そんな道をしばらく進んでいくと、やがて鞍馬停留所に到着するが、停留所は叡山電車鞍馬駅前にあり、叡電との乗り換えが可能。京都バス32系統に乗ってみたいけれど、さすがに長時間の乗車はしんどいという方は鞍馬駅まで叡山電車を利用し、そこからバスに乗り換えるという方法がある。この場合は叡山電車の方が13分早く着くが、乗り換え時間を考えると結局大差ない。また、運賃は90円余計にかかるが、長時間のバス乗車でお手洗いが心配な人には叡山電車の利用もオススメだ。鞍馬停留所の次、鞍馬温泉停留所を出ると、いよいよ花背峠。鞍馬温泉停留所までは別に京都バス52系統も運行されているが、ここから先は一般乗合バスとしては32系統の独擅場になる。

花背峠越え


鞍馬温泉停留所を出るとバスは自由乗降区間に入り、音楽を流しながら走行する。この区間では乗客は好きなところで(もちろんルートから外れない範囲で)降ろしてもらえるし、道路上に居て乗りたい人は手を上げて合図をすればバスが停まってくれる。もっとも、花背峠の区間では道路の両側には林と法面しかなく、誰か乗ってくるようには思えないのだが……。流す曲については決まっていて、広河原行きはグリーンスリーブス、出町柳行きはアニーローリーだ。自由乗降区間となってもバス停はあり、次の停留所名を告げる車内放送も流れる。

花背峠は国道477号線の一部で、この国道は酷道マニア(注4)の間では有名だそうだ。というのも、バスが通らない区間になるが、同国道には百井峠があるからだ。この百井峠は花背峠よりもさらに荒れた路面・隘路・急勾配で名高く、大型車は通行禁止になっている。この区間があまりにも劣悪なため、花背峠の区間が見劣りしてしまうが、花背峠も相当酷い道路だ。いくつものヘアピンカーブを抱え、幅員も狭く、タイミング次第では正面から対向車が来るとどちらかが後退を余儀なくされる。そんな道路を中型路線バスが走行するのだから、運転手さんは相当神経を使うことになるだろう。しかし、私のような客からすれば非常にエキサイティングなバス路線だ。

峠道に入ってしばらくすると百井別れ停留所に差し掛かる。ここで是非前方を見て頂きたい。道が二つ見えるはずだ。見た瞬間、バスが左の道を進むのは明らかだが、問題は右側の道。どう見ても作業路か何かにしか見えないような狭い道が急勾配で下っている。バスはここまで府道38号線を走ってきたが、この分岐地点から国道477号線に合流する。つまり、前方に見える道路はいずれも同じ国道ということ。この百井別れは国道477号線が酷道と呼ばれる原因の一つで、国道477号線に沿って走ろうとすると、この鋭角分岐を曲がることになるが、乗用車が切り返しせずに曲がることはほぼ不可能だ。そして停留所名が示す通り、ここで分岐している道路こそが先に述べた百井峠を越える酷道である。

無事に花背峠を超えると、まもなく花背山の家前停留所に到着する。この花背山の家は京都市野外活動施設で、京都市内の学校が利用するほか、大学のサークル等の合宿にも度々使われるようだ。なお、花背山の家前停留所までは小学校などの団体輸送を行うために、京都バスの特定路線バス(注5)が運行されており、市内中心部でも時々目にすることができる。このバス路線、個人的には花背峠の区間が最大の見どころだが、その先も隘路が続くことに変わりはない。

さて、次の見どころは大布施停留所付近だ。この停留所は橋を渡ってすぐにあるが、そもそもこの橋が狭い。そして、この狭い橋を渡った直後に丁字路に突き当たり、そこを右折して国道477号線と別れる。右折先の道路も狭いので、バスはガードレールや樹木に接触しないよう、細心の注意を払いながらゆっくりと曲がる(注6)。ただこれだけのことだが、実際に見てみると運転手さんの運転技術に感心させられる。京都バスは毎日こんなところを運行しているのである。

終点、広河原


その後、森林公園の最寄りとなる花背交流の森前停留所や、峰定寺に近い大悲山口停留所を過ぎ、バスはやがて終点の広河原停留所に到着する。広河原停留所は道路脇の広場に設置されており、バスは後退しながら到着する。到着後、バスはエンジンを切り、運転手さんは停留所脇の小屋に入って休憩する(車内で待機することもある)。

広河原停留所の近くには京都市内唯一のスキー場、京都広河原スキー場がある。バス停にはスキー持ち込み料についての注意書きもあり、それによるとスキー持ち込み料は一組につき300円を限度に大人運賃の半額(端数切上げ)、要するに出町柳駅前からだと運賃のほか300円のスキー持ち込み料が必要ということになる。京大から歩いていける出町柳駅、そこからスキー場へ行くバスが運行されていることはあまり知られていないのではなかろうか。もちろん、広河原スキー場でもスキー板やスノーボードなどのレンタルを行っており、気軽に楽しむことが出来る。昨シーズンでは、1日リフト券は16時半まで利用可能で、広河原17時30分発の最終バスに丁度良い時間である。ナイター券が別に販売されており、22時半までのナイター営業時間内で利用可能だ。

ところが、スキー場が営業していないオフシーズンには広河原で何をするか悩まされる。まず、お手洗いについてだが、停留所の近くに地元の方のご好意で開放されている無料のお手洗いがある。長時間のバス旅なので、このお手洗いは重宝する。次に飲食についてだが、広河原にはカフェがある。しかし、私が行った時は営業しておらず、定休日も書かれていなかったため、利用できるかは運次第ということになる。そのため、出町柳駅のコンビニ等で飲食物を購入してから広河原へ向かうのが無難だろう。さて、広河原停留所付近を歩きまわった後、手持ち無沙汰になる。そこで私はバスが来た道を出町柳に向かって歩いた。少し歩くとのどかな集落が存在するが、そこも京大と同じ京都市左京区に属する。交通量の少ない道路をゆっくり歩いていると、やがてバスの発車時刻になるが、先述の通り、この路線は鞍馬温泉停留所以北で自由乗降区間だ。つまり、バス停で待つ必要はなく、バスから流れるメロディが聞こえた時に合図をすれば乗ることが出来るため、気楽に歩いていれば良い。もちろん、広河原で折り返し便の発車を待つのも良いだろう。

ところで、京都市の北部には京大の芦生研究林(注7)がある。この芦生研究林の公式サイトにあるアクセス情報を見ると「京阪出町柳駅から京都バスで広河原(約2時間)。さらに徒歩約3.5時間」という記述がある。そう、このバス路線は京大にも無関係なものではなく、関連施設の公式アクセス情報に記載される、重要路線と言えよう。

余談だが、毎年夏になると広河原や花背では、洛北に伝わる火祭である松上げが行われる。この松上げを観るのに、この路線バスでは日帰りができない。そのため、今年の夏は京都バス主催の松上げ鑑賞バス(注8)がそれぞれ出町柳駅前から運行された。この松上げ鑑賞バスは出町柳発の淀屋橋行き最終電車に間に合うように運行される。

さいごに


このように、京都バス32系統は花背以北の地域の足としてのみならず、スキーバスという側面も持ち合わせ、さらには京大の施設への足にもなる。そして、私のようなバス好きにとっては、乗車するだけでも充分楽しい路線だ。なお参考までに、出町柳駅前から広河原までの運賃は片道1050円(2013年12月現在)だ。この路線では京都観光一日乗車券など、多くのフリーきっぷは使えないが、スルッとKANSAI 3dayチケット(注9)が使える。このチケットは3日間5000円で発売され、1日1667円分の乗車で元が取れるため、少し節約できるかもしれない。魅力あふれる京都バス32系統。みなさんも一度、このバス路線を利用してバス旅をしてみてはいかがだろうか。

脚注
(注1) 京都バス10系統……京都市左京区の出町柳駅前停留所から、滋賀県高島市の朽木学校前停留所を結ぶ一般路線バス。京都バスのバス路線としては最長距離を運行するが、現在は土休日のみの運行となっており、さらに冬季は運休する。
(注2) 中型バスもしくは大型短尺バス……いずれもバス車両のサイズ。路線車は一般的に、大型バスは車幅2.5m、全長10・5mだが、大型短尺バスはそれを9mに短くした車両。現在では生産されておらず、全長が同じくらいで車幅が2.3mの中型バスに置き換えられつつある。なお、中型バスと呼ばれるが、運転するには大型免許が必要。
(注3) 奈良交通の押熊線……奈良交通72系統のことで、奈良県奈良市の西大寺駅から押熊までを運行する一般路線バス。経路のほとんどを、住宅街の狭隘道路が占めることで有名。
(注4) 酷道マニア……一般にイメージされる国道といえばおそらく、2車線以上の幅が確保されており、対向車のことをあまり意識せずに走行できる道路だろう。しかし、国道によっては対向車とすれ違うことが難しい狭隘な区間を含んでいたり、急勾配を抱えていたりする。そのような「酷い」国道を愛する人々のこと。
(注5) 特定路線バス……小学校などの団体が貸し切って利用する路線バス。一般的な貸し切りバスとは異なり、経路に大きな制約がある。
(注6) ゆっくりと曲がる……バスは前後に長いため、内輪差が大きい。そのため、普通は先頭部を反対車線にはみ出させる等して大回りするが、ここでは道幅に余裕が無く、少し曲がるタイミングを間違えれば車体のどこかが路上の建築物に衝突する危険が高い。
(注7) 芦生研究林……京都大学フィールド科学教育研究センター森林ステーション芦生研究林 http://fserc.kyoto-u.ac.jp/asiu/
(注8) 松上げ鑑賞バス……松上げに際して京都バス主催で行われるバスツアー。
(注9) スルッとKANSAI 3dayチケット……スルッとKANSAIに加盟する鉄道・バス会社の路線の多くを利用できるフリーパス。毎年春・夏・秋の各シーズンに期間限定で発売され、指定期間内の任意の3日間で利用できる。

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