文化

多様な性にむけて 2013年度近弁連人権擁護委員会夏期研修会「セクシャル・マイノリティを取り巻く現状と課題」

2013.07.16

7月6日、大阪弁護士会館にて、近畿弁護士連合会人権擁護委員会夏期研修会「セクシュアル・マイノリティを取り巻く現状と課題」が行われた。近畿弁護士連合会とは、近畿地区(大阪高等裁判所の管轄区域)6府県の弁護士会によって構成される団体。同研修会は、「セクシュアル・マイノリティを取り巻く現状と課題を明らかにするというスタート地点に立ち、基礎的な情報提供等の報告を行い、今後の弁護士・弁護士会としての取り組みを展望する」ことを目的としたもの。講演者として、石坂わたる氏(中野区議会議員・元養護学校教諭)、東優子氏(大阪府立大学大学院人間社会学研究科教授)、渡邉泰彦氏(京都産業大学法科大学院教授)の3名が招かれた。

開会の挨拶で、同研修会実行委員長の雪田樹里弁護士は、6月26日に米国の連邦最高裁が同性婚を禁じる「結婚保護法」を違憲と判断した事などを挙げ、国際的に1990年代からセクシュアル・マイノリティの人権保障の考え方が進展してきていると述べた。一方、日本でのセクシュアル・マイノリティに関する法律は、現状では様々な問題点を含んでいる「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」のみであり、行政的な取り組みもほとんど進んでない。セクシュアリティとは非常に重要な人権であるにもかかわらず、弁護士会は何の取り組みもしてこなかった。このことを反省し、この研修会を今後の取り組みの出発点にしたい、と語った。

研修会は二部構成となっており、第一部では同研修会実行委員会による基調報告が行われた。189ページに及ぶ報告書を用いながら、子どもや労働、医療など様々な視点からのセクシュアル・マイノリティに関しての報告がなされた。

第二部では、講演者三人がそれぞれ講演を行い、その後パネルディスカッションが行われた。

講演者のうち、渡邉泰彦氏は同性関係の立法などについて話した。世界各国の同性関係の保護についての立法状況をみると、1990年代にデンマークなど欧州の一部の国々で登録パートナーシップ制度の導入が見られるようになり、2000年代には、オランダの同性結婚法成立(2000年12月)をはじめとし、欧州だけでなく世界各国で同性婚や登録パートナーシップ制度の導入が行われてきた。また、各国での同性関係の保障形態が多様であり、異性間と同様に同性間に婚姻を認める同性婚、すべてのカップル、もしくは同性カップルのみが利用できる登録パートナーシップなどが存在しているとした。そうしたことを踏まえ、今後の日本で同性関係の保障をしていく上で、内縁関係・事実婚を司法や行政で認め、登録パートナーシップや同性婚の立法へつなげていく方法、登録パートナーシップの立法から同性婚の立法へとつなげていく方法、直接同性婚を立法や司法で認めていく方法が考えられる、とした。

パネルディスカッションでは、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」の孕む問題性や同性関係の保障の国内の取り組みなどに関して、講演者たちが自らの意見を述べ、それぞれの講演で話した内容よりもさらに深い議論を展開させた。

最後に、弁護士が今後どのように行動すべきかについて、講演者の一人、石坂氏は「セクシュアル・マイノリティがいる事をわかって法教育をしてほしい」と述べた。(湘)