新刊書評『ゆとり京大生の大学論―教員のホンネ、学生のギモン』(ナカニシヤ出版)(2013.07.01)

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「大学」・「教養」 曖昧な概念の具体化を試みる

「教養教育」と一括りにされたところで、私達は漠然とした イメージしか捉える ことができない。「グローバルリーダー」と言われても何がグローバルでどのようなリーダーなのかなんてわからない。さらに言えば、こうした目標を掲げる 「大学」という場所がいったい今何を目指 しているのかなんて、私達には見当もつかない。しかし私も含め、こうした漠然として曖昧な言葉に対して無知の状態のままで、大学生活を充実したものに しようと、多くの人が日々考えて過ごしていることだろう。

こうした曖昧な言葉の数々を、少しでも具体化することを試み たのが本書『ゆとり 京大生の大学論』だ。本書は大学教員からの寄稿と、それを参考にした京大生の大学に関する議論から構成されている。前半の寄稿部分は、大学教員が大学、教養といったものについて思い思いに述べる。彼らの寄稿は一人一人が独自性を持っていて、双方対立する意見もあれば、そも そもこの企画に対して異議を唱える文面まで存在する。「幅広い知識を身につけるもの」「専門科目の下地となるもの」「学際を達成するも の」程度にしか私が捉えていなかった「教養」という言葉に対する彼らの議論は、恐らく多く の大学生に思考の新たな枠組みを提供する。「時代とともに教養は変遷する」「教養とは知への態度そのもの」「学問一般 の原点」。抜粋として書くにはあまりに具体性に乏しい言葉だが、それは教養という言葉がこれほど人口に膾炙しているにも関わらず、実際は 捉えることに難を要するものだという示唆も含んでいるだろう。

後半の議論部分は私達と同じ 「学生」という立場で行われ、議論の内容も専門的なものではないが故に、内容が腑に落ちやすく、教育に関して有する知識で十分に把握が可能である。大学と いうものを 前向きにとらえ、その中でどう有意義な時間を過ごすかを議論する彼らの姿勢は、同じ大学生である私たちに大学教育を考えることへの意欲を 刺激するものであった。

そしてそれは 同時に、この本の執 筆を思い立った彼らが、私たちに望むことでもある。今私たちは大学生として、一生の中でも他に類を見ないほどの自由な時間がある。このモ ラトリアムをいち大学生として、大学の中で生きていく大学生として、どのように扱えばよいのか。本書が果たす役割はその取扱説明書程度の ものだろう。一見不十分で非実用的なように見えるが、もちろんそれは読む価値が無いことを意味するわけではない。純粋な学問というものが 多くの場合において実用的でないものとするなら、一見非実用的に見える、括弧つきの「教養」―教養という言葉に対する多種の理解―を学ぶためのものとして、本書は価値を持つものと言えるだろう。(草)

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