春秋講義 インドの成長を支える多様性社会 アジア・アフリカ地域研究研究科・田辺明生教授(2013.05.16)

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5月8日、吉田キャンパス百周年時計台記念館・百周年記念ホールにて、アジア・アフリカ地域研究研究科の田辺明生教授による春秋講義「現代インドのダイナミズム―多様性社会の挑戦」が行われた。春秋講義は、京都大学における学術研究活動の中で培われてきた知的財産を広く学内外の人々と共有することを目的として、毎年春と秋に開講されている。今季は、「アジアにおけるインド・中国のパワー」がメインテーマとなっており、前回4月24日に行われた地球環境学堂の劉徳強教授による「中国パワーの源泉と行方」の講義に引き続いて、今回は中国と並んで発展が著しいインドが取り上げられた。

田辺教授がまず言及したのは、私たちが一般的にインドに対して抱いている「カースト制度による差別社会」という印象について。現状では、確かにこうした差別問題は解消されているわけではない。だが、現代インドの特徴は、そうした格差や不平等を解消する過程で生まれた「成長力を持つ開放的な多様性社会」という側面である、と田辺教授は主張した。

そこで、田辺教授はこうした現代インドの成長を支えるメカニズムを理解するには四つの視角が必要であると述べた。まず一つ目は「生存基盤論的歴史観」である。インドは地理や環境、文化など様々な側面から見て、多くの要素が入り組んだ多様性国家だ。こうした多様性に適応するため人々は自らに合った生業を営み、その労働の結果が社会的経験として蓄積されることになる。インド社会は多様性を保持・発展させていき、そうして生まれた社会集団をゆるやかに統合していくことを可能にした多様性維持型の発展をとげたのである。

二つ目の視角は「南アジア型発展経路」だ。インドは、1990年代に経済の自由化が行われてからは平均6%の成長を達成すると同時に、民主主義の深化も進行してきた。この発展の背景には、第一の視角として挙げられた生存基盤論的発展と、多元的公共参加がある。これは、それぞれ独自の行為主体性をもった人々が政治に参加することによって、各自が上からの標準化・規格化に左右されない多元的な需要に基づいた要求を行う動きである。その結果として、選挙だけに頼らないような社会運動が活発化するなど、民衆の多様な声が政治に反映されるようになってきたという。

さらに、田辺教授は三つ目の視角として「開発民主制」への体制変容を挙げた。「開発民主制」は、多元的社会集団の公共参加を基盤としつつ、市場と生存基盤の拡張のバランスをとりながら、包摂的かつ持続的な発展を目指す体制のことを指す。この考え方は、経済成長と民主主義のどちらを優先させていくかというジレンマから脱却できる可能性を大いにもったものである、と田辺教授は話していた。

最後に、「多様性のつながり」によるグローカルネットワークという視角が講義の結びとして挙げられた。人々の多元的な要求というローカルな視点を、政治参加という形で全体へと反映させていくグローバルなあり方を用いたグローカルネットワークこそが現代インドの活況の基礎となっていると田辺教授は主張する。また、こうしたインドの多様性の特徴は、現代のグローバル世界に対しても当てはまるものでもある。インドの多様性社会におけるこれまでの経験は、今後ますますグローバル化していく世界に対処するためのモデルになりうるものだとして、教授はインド社会研究のさらなる可能性を示唆した。(真)

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