霊長類学の権威 J・グドール氏に名誉博士号授与 チンパンジー保護の実績認められ(2007.11.16)

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野生チンパンジー研究の権威で、今月12日に京都大学名誉博士号を授与されたジェーン・グドール博士(73)(英国)の記念講演会が11日、京都大学時計台記念ホールであった。同会は今年4月に発足したチンパンジー・サンクチュアリ宇土と霊長類研究所・福祉長寿研究部門の出立を祝い、来年度発足予定の京都大学野生動物研究センターの展望を語る目的でも開かれた。

グドール博士は1977年に野生動物の研究・教育・保護団体であるジェーン・グドール・インスティテュートを設立。91年からは、自身がRoots&Shoots(ルーツアンドシューツ)と名付けた活動にも取り組み、動物や自然環境、地域社会について一人ひとりが考え行動することを訴えてきた。今回、このような取り組みが評価され、京大の理念である「地球社会の調和ある共存」にも合致するとして、グドール博士に名誉博士号が授与された。これは、2004年8月の利根川進博士に続き、11人目の受賞となる。

「野生チンパンジーと過ごした48年」と題した講演では、時折チンパンジーの鳴き声を真似ながら、その習性を様々な逸話を交えて紹介。群れのトップに立つためには力の強さよりも頭の良さが求められること、チンパンジーには強い兄弟愛、親子愛が見られることなどが語られた。

また、学習を通じて様々なことを理解するようになるチンパンジーの高い知能についても触れ、チンパンジーよりも遥かに優れた知性を持つヒトが環境破壊を引き起こしてしまった現状を指摘。「一人ひとりが気付き、行動することで世界は変わってゆく」というRoots&Shootsのメッセージを引用した。

講演の最後には、医学感染施設に入れられた経験がありながら、心を通わせたマークさんの命を救うに至ったOldManというチンパンジーの逸話を紹介。「チンパンジーでもこんなことができる。私たちも、過酷な状況にある人や動物たちにもっとできることがあるのではないか」と講演を締めくくった。

グドール博士は60年からタンザニアのゴンベジャングルで野生チンパンジーの研究に着手。チンパンジーが道具を使うことを世界で初めて発見するなど、様々な研究成果を挙げた。京大の故今西錦司、伊谷純一郎氏らのグループとともに切磋琢磨し、霊長類学という分野を新たに開拓。後進の育成にも努めてきた。90年に京都賞(稲盛財団)を受賞してからは京大などでも特別講義を行っている。

グドール博士の講演に先立つ第一部では4人の教授が弁を奮った。最初に壇上に上った松沢哲郎教授(霊長類研究所・所長)は、ゴリラ、チンパンジー、オラウータンのヒト科3属が近年、森林伐採や密猟、戦争の影響などによって数を減らしてきていることを指摘。人間を合わせたヒト科4属が共生できる環境作りを目指すのが野生動物研究センターの目標であるとした。また、山極寿一教授(理学研究科)は、目を合わせることによる対面コミュニケーションはヒト科3属に特徴的な行為であり、ニホンザルなどでは見られない現象であることを紹介。人間は何故、食べ物を分け合ったり、遊んだりするのかという問いを考える時、人間だけを研究するのではなく、類人と合わせて研究することが必要であり、それこそが同センターの可能性であると訴えた。

伊谷原一・林原生物化学研究所・類人猿研究センター所長はチンパンジー・サンクチュアリ宇土の運営目標を説明した。チンパンジーにとって肉体的、精神的に幸福な環境を作ること、国内に複数の飼育拠点を確保すること、そして職員とチンパンジーの双方にとって安全、安心な将来構想を立案することなどが提示された。最後に、現在の老齢医療における最大の問題がアルツハイマー病であることを指摘した松林公蔵教授(東南アジア研究所)は、「進化の隣人」たるチンパンジーにもアルツハイマー病が見られるのかどうかを解明する必要性があると主張。その有無によって、治療法の開発に類人を含めた研究が有効なのか、それとも人間に特化した研究が必要なのかを見極めるべきだとし、同施設への期待を語った。

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