文化

映画評 『クラウド アトラス』

2013.04.01

デヴィッド・ミッチェルの小説を「マトリックス」でおなじみのウォシャウスキー兄弟率いる監督陣が映像化。その時代その時代を生きる人々を通して、過去から未来へ意志が受け継がれていく輪廻転生の観念を描いた作品だ。輪廻を経て、前世の因業を占うといったストーリーは比較的日本人に馴染みあるという点も見る上で参考になるかもしれない。

あらすじを書いていく。描かれる6つの時代の内、初めに登場する1849年では太平洋に浮かぶある島でトム・ハンクス扮する初老の医師ヘンリー・グースが、島で出会った弁護士ユーイングに治療を施すシーンが描かれる。1936年、ユーイングの航海日誌を読む音楽家フロビシャ―は、父親に勘当されて同性愛者の恋人シックススミスの下を離れてスコットランドに住む作曲家エアズの家に訪れる。二人は後世で名曲と謳われる「クラウドアトラス六重奏」を作曲することになる。物語は繋がり、1973年、フロビシャ―と別れたシックススミスは物理学者になり、原発事故を起こして企業の利権を守ろうとする男を告発しようとジャーナリストのルイサに告発書を託そうとするが、道中で殺し屋に命を奪われてしまう。2012年のロンドンではダーモットという作家が殺人を犯したことを機にカルト的人気を得て著書をベストセラーにした。そこで彼の出版元にいたキャヴェンデッシュは大儲けすることになるが、周りの人間の策略により、老人介護施設に監禁の如く入院させられることになる。時代は大きく飛んで、2144年。全体主義国家ネオ・ソウルでは、遺伝子操作で作られた複製人間が純血の人間によって奴隷的扱いを受けていた。ある日、複製種の少女ソンミは革命軍に影響を受けて、自分も時流に反旗を翻すことを決意する。最後に登場する時代は文明が崩壊した未来のある世界。羊飼いの男ザックリ―は、内なるもう一つの人格に悩まされていた・・・。

やはりポイントになるのは輪廻転生のコンセプトだろう。役者が時代ごとに入れ替わり立ち代わり演ずるといった演出も人によって感じるものが違ってくると思う。各時代の描写は淡々と進むけれども、見ていると次第に妙に繋がってくるエピソードがあったりして、演出を精一杯楽しむ映画だと思った。(水)

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