MOOCs体験記 ~英語で授業を受けてみる~(2013.04.01)

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近年注目を集めているMOOCs。ハーバード大学やスタンフォード大学といった有名大学がオンラインで授業を配信しており、世界中で受講者は急速に増えている。配信される授業の多くは英語だが、無料で受けることができる。多額をかけてまで外国人教員を雇う必要もない。

今回、編集部でMOOCsを実際に体験してみることになった。編集員が英語で授業を受け、そのレビューを本紙に掲載する。最初にMOOCsについての簡単な説明から入り、その後に2人の編集員が「English Composition I: Achieving Expertise」「Justice」についてそれぞれレビューを書く。 (編集部)

MOOCsとは


Massive Open Online Courses(大規模公開オンライン講座)の略。MOOCとする向きもあるが、本紙ではMOOCsとする。

大学がインターネット上で行うサービスとしてはOpenCourseWare(OCW)がある。これは大学で行われている授業のビデオやノートを、インターネットを通じて無償公開するものである。MITが2003年に始めたのが最初とされており、京都大学でも2005年から行っている(ただし京大のOCWはあまり充実していない)。

一方MOOCsでも、OCWと同じくインターネットを通じて授業が配信されている。しかし大学で行われたものをそのまま公開するのではなく、授業はMOOCs用に用意されているのである。特にビデオを短く区切るなど、デジタル学習ならではの工夫もなされている。また用意された課題を提出し、それに対するフィードバックまで受けられる。掲示板が用意されていたり、FacebookなどのSNSと連動したりして、同じ授業を受ける仲間と議論を交わすこともできる。さらに授業を最後まで受け、一定の基準を満たせば修了証が交付されるのである(有料の場合あり)。

MOOCsとはこのような特徴をもつサービスの総称で、Coursera、edX、Udacityなどがある。以下は、編集員が現在利用しているCourseraとedXについての説明。

〈Coursera / コーセラ〉

スタンフォード大学の教授が中心となり2012年に創設。現在300以上の授業が開講されている。多くは英語だが、中にはスペイン語、フランス語、イタリア語、中国語の講義もある。受講者は300万人を超え、今も急速に増加している。

今年2月には東京大学がCourseraへの参加を発表した。村山斉氏による「From the Big Bang to Dark Energy」と藤原帰一氏による「Conditions of War and Peace」が配信される予定。

Courseraには現在、スタンフォード大学、プリンストン大学など62の大学ほか高等教育機関が参加している(3月24日時点)。

〈edX / エデックス〉

ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学が合同で2012年に創設。現在の開講数は26。上記2校とカリフォルニア大学バークレー校が開講している。『これからの「正義」の話をしよう』などの著書で有名なマイケル・サンデル教授も「Justice」を開講している。

edXでは講義を配信するためのプログラムをオープンソース化している。

English Composition I: Achieving Expertise

~Denise Comer / Duke University [Coursera]~

デューク大学が開講する「English Composition Ⅰ」はアカデミックライティングについて学ぶ講座だ。世界中で60000人を超える人が登録している。第1週のテーマは「The Writing Process and Reading Critically」。

受講の流れを説明しよう。まずはビデオを観る。第1週のビデオは全部で12本あり、時間はいずれも10分程度。少し新鮮なのは、観ている途中で画面が切り替わり、アンケートや選択式のクイズが出てくることだ。答えるとビデオの続きが流れる。このように集中力が切れないような工夫がされている。とはいえ、講師の話す英語が速くて聞き取れず、内容の理解ははかどらなかった。気がついたら上の空になっている。ビデオは繰り返し観る事ができるが、どうも頭に入ってこない。そういう人のためなのだろう、ビデオにはテキストファイルがあり、話していたことを文字で確認することができる。

ビデオを観た後は課題に取り組む。課題はリーディング、ライティングがそれぞれ用意されている。今週のリーディング課題はアメリカ人作家ダニエル・コイルの著書「The Talent Code」の第1章「The Sweet Spot」を読むこと。ライティング課題は「I am a writer」というタイトルのエッセイを300語程度で書くなど4つある。ライティング課題は「Discussion Forum」内にスレッドを立てて書く。スレッド内では他の人とやり取りをすることができ、お互い励まし合ったり、文章をほめたりしていた。

しかし、今こうしてレビューを書いている私は、本講座のシステムがあまり把握できず、ビデオを観ただけで〆切を迎えてしまった。もちろん、第1週の課題を何一つやっていない。しかし、デューク大学もこのような人間がでてくるのは想定しているようだ。「Start Here」には「don’t hesitate re-join us when you again have time. We will welcome you back!(時間ができたらためらわずに参加してください。あなたのお帰りをお待ちしております!)」という素晴らしい文章が掲載されている。私も第5週くらいから本腰を入れることにしよう。 (築)

Justice

~Michael J. Sandel / Harvard University [edX]~

第1講は、この講座全体の導入だ。ここでサンデルは、いくつかの例を挙げ、それぞれの場合にどう行動するかを学生達に問う。それらはいずれも、より多くの人間を救うために、1人を犠牲にすることを正しいと思うかどうかを問うものだ。例の場面の設定によって多寡に差はでたものの、どの場合でも「多数を救うためならば、1人(少数)の犠牲を払うべきだ」という意見、「どうあっても多数のために一人を犠牲にすることは許されない」という意見の2つに大別された。

学生の意見をいくつか聞いた後、サンデルは、道徳についての考え方として、二つの考え方を紹介した。行為の結果を重視する帰結主義の考え方と、結果に関わらず特定のきまり、義務、権利を守ることを重視する考え方だ。

サンデルは、講座ではこの2つの考え方の対比される点を探る。そのためにアリストテレス、ベンサム、カントといった哲学者の著書を読むとともに、現代の政治的な問題についても議論していく、と講座の内容を語った。そして、道徳の問題についての思考を止めないことの重要さを強調し、考えることをやめないよう喚起すること、そして不断の思考が何をもたらすのかをみていくことが講座の目的である、と締めくくった。

第2講は、帰結主義、特に功利主義の話題についての導入となっている。ここでは、実際に起こった事件が例として取りあげられた。4人の男が乗った船が沈没し、ボートの上、水も食糧も殆どないままに助けを待つ。しかし、空腹も限界を迎え、養うべき相手も身寄りもない、死にかけているようにみえた1人を殺し、食べることにより残りの3人は飢えをしのいだ、というものだ。

ここでサンデルは問う。生き残った3人は道徳的に許されるだろうか、と。この問いに対し、意見を求められた学生達は大まかに分けて4つの立場をとった。1つ目が、より多くの人間に良い効果をもたらすためには1人を犠牲にすることは許されるとする立場。2つ目が、公平な手続き(この例では、くじ引きで犠牲になる1人を選ぶという手段だった)を経た結果ならば許されるとする立場。3つ目が、犠牲になる1人がそのことに合意した上でならば許されるという立場。そして4つ目が、いかなる場合でも殺人は認められないとする立場だ。これらを踏まえ、サンデルは、第2講の最後に、3つの疑問を提示した。それは、「①殺人が許されないのは、全ての人間は基本的人権を有するからだとすれば、その根拠となるのは何なのか。②公平な手続きさえ踏めば、その手続きがもたらすどんな結果も正当化されうるのか。③道徳的な判断に対し、合意はどのような影響を与えるのか」である。

第1週の分の映像はおよそ1時間。最初に一度通して視聴してみたのだが、内容の把握率は高く見積もって5割くらいだった。1つ目の例が有名なものであり、かろうじて聞き取ることができたため、後はそこから授業の展開、意図を類推して意味を掴もうとした。大まかな意味合いは把握できた部分もあったが、細かい理解にまでは至らなかった。その後、繰り返し視聴してもいまいち細部が掴めないため、英語の字幕を付け、行きつ戻りつ確認を重ねた。さらに、辞書を引きつつ確認することで何とか一定の理解に至った。数時間に及ぶ作業だ。

正直なところかなり辛いものがあった。この講座をもとにしたサンデルの著書『Justice』を読めば、これくらいの内容を理解するのにかかる時間は4分の1以下だっただろう。その分授業の内容を検討することに時間が割けるというものだ。

かけた労力のわりには実りの少ない作業だったように感じる。正直なところ、これを続けていくのは辛い。大人しく日本語で倫理学の講義を受けるとしよう。(待)

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