文化

学生に紙面を開放する新聞社の挑戦 京都新聞@キャンパス 成果と課題

2012.11.01

10月12日、京都市中京区の遊子庵で、京都メディアフォーラム(Phase II)が開催された。京都メディアフォーラムはメディアに疑問や関心を持つ人が交流し議論する場として月1回ペースで開かれる。フォーラムでは毎回招くゲストスピーカーの話を基に、メディアについて考える活動を行っている。前身の時を含めて京都メディアフォーラムは2003年から活動していたが、2012年2月に活動を一時停止し、そして今年の10月からPhase IIとして新たな形で再開した。

Phase IIとして第1回となった今回は、稲庭篤・京都新聞文化報道部記者が『大学生が参画する紙面作り―京都新聞「@キャンパス」の挑戦』と題する講演を行った。@キャンパスは2011年6月から開始された大学生が取材、執筆、編集をした記事を載せるコーナーであり、毎週水曜日に京都新聞夕刊に2面分掲載される。記事のテーマは主に京都・滋賀や大学に関係すること。

講演ではじめに稲庭氏は、京都新聞が@キャンパスを始めた狙いは、学生の新聞に対する関心を高めるためだと述べた。学生の新聞離れが進む中、京都新聞も学生購読者が少ないという問題を抱えている。そこで大学生に新聞作り関わってもらうことで、彼らの新聞への関心を高め、ひいては京都新聞の学生購読者数の増加につなげるという。さらに学生に地域社会に関わる記事を任すことで、地域と学生と読者をつなぐ役割を京都新聞が果たすことが出来ることも述べた。

その後に稲庭氏は今までの@キャンパスを振り返りながら、その成果と課題に言及した。@キャンパスは学生だけでなく京都新聞側の担当者にも負担になる企画だという。学生は取材や記事の執筆の作法を知らないため、学生だけでは紙面を作り上げることが難しい。そのため同行取材や記事の書き方の指導をする担当者の負担が重くなってしまう。また週一回の紙面完結の読み切り企画であるため、双方向性がないことも課題に挙げた。一方でこの企画を通じて学生が成長したことや新聞記者が持たない学生ならではの視点が紙面に反映されることに触れ、存在意義がある企画だと強調した。

@キャンパスの今後について稲庭氏は、様々な課題を抱えているが学生が取材の中で感じた思いを大事にして今後もこの企画を進めていきたいと述べた。
講演後には意見交換が行われ、フォーラムの参加者から「HPやTwitterで紙面との連動企画をしたらよいのではないか」、「@キャンパスの紙面をまとめた冊子を出してはどうか」などの多くの意見が出された。(狭)