〈講演会録〉戦後日本のなかの沖縄―日米安保・密約とメディア 中編(2012.09.16)

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7月28・29日、同志社大学寒梅館ハーディホールにて、同大教授・浅野健一ゼミ企画によるシンポジウム「国策とメディア-沖縄と福島から」が開催された。28日にはシンポジウムに先立ち、沖縄返還協定における密約が白日の下にさらされるきっかけを作った「西山事件」で知られるジャーナリストの西山太吉氏が講演。今なお日本社会に大きな禍根を残している沖縄米軍基地問題の歴史的経緯と、現代日本メディア・政府が抱える構造的問題について語った。

今号では、西山氏の講演の中盤部分をお伝えする。(編集部)

〈講演会録〉戦後日本のなかの沖縄―日米安保・密約とメディア 前編(2012.08.01)


アメリカのための 日米安保

返還後も沖縄問題は残ることになります。何かが起こるたび、アメリカが若干日本にコミットしているのを見せつけることによって、よりアメリカの戦略体系の中に組み込まれていく構図になります。その過程で、日米軍事同盟の下部構造として強靭なものができあがっていくわけです。

一つの例を挙げましょう。1995年、沖縄で米兵による少女暴行事件が起こります。普天間基地の問題が提起されたのはこれが契機でした。この事件が沖縄の人たちの基地反対闘争を激化させたために、その沈静化の手段として、「世界で最も危険な基地」と呼ばれた普天間基地のリロケート(移転)が話され始めたのでした。アメリカも少しは考え始めたのだな、と思わせるためです。しかし、その1週間後に出された日米共同宣言はどんなものだったのか。日米安保条約の対象領域は極東の範囲、フィリピン以北だと言ってきたのに、この日米防衛ガイドラインの見直し、いわゆる日米共同宣言によってアジア・太平洋全域がその対象となりました。それは、日米安保条約をことごとく変質させてしまったのです。少女暴行事件、普天間基地のことがそこでも利用された。それによってより大きなアメリカの戦略の中に日本は入っていくのです。「安保」とは「日米安保」ではなく「アメリカ安保」のことだったのですね。アメリカ安保の構造の中に日本が一機能として入っていく。アジア・太平洋なんていうのはもはや世界の半分です。

もう一つ話があります。在日米軍がアジア・太平洋に出兵することになると、それは「周辺事態」という話になる。地理的概念ではなく、紛争の性質が問題となるわけですから、アメリカがそれを周辺事態と認識すれば、地理的な周辺地域でなくてもいいのです。つまり、在日米軍が世界のどこにでも出動できることになります。中国政府はこの時に「俺たちを敵視するつもりか」と文句を言いました。当時の橋本龍太郎内閣は何と言ったか。「我々にはそんなつもりはないのです。アメリカと日本が紛争の性質を両者に対する脅威と認識すればよく、地域のことは問題ではない」と言ったのです。さらにおまけがつきます。在日米軍が周辺事態として認識し行動した際は、自衛隊が後方支援することになったのです。とうとう憲法九条の枠まで超えてしまった。日本の作戦行動はアメリカと完全に一体化するのです。それが1997年のことでした。


米軍追従の自衛隊

そして2006年、今度は中近東問題です。イラク、アフガニスタンの問題。どうしても日本の自衛隊を利用したい。その時に米軍再編が起こります。沖縄の海兵隊は1万8000人位が定員だが、そのうちの8000人をグアムに移転するかという話になった。グアムには海兵隊がないでしょう、ちょうどいいから持って行ってください、と言って、グアムをアジア・太平洋のハブ(拠点)にすることにします。外国の軍隊が入れない沖縄では多国籍軍の軍事訓練ができません。米軍は多国籍軍の訓練が必要なので、日本に対し「訓練場を作れ」という。そして「お前たちは俺たちが中近東で対テロ戦争をしているのに傍観する気か」と協力を要求してきます。日本は「はい分かりました」と陸上自衛隊の中に中央即応集団という対テロ部隊を作ります。すると今度は「座間のキャンプに入ってこい」と言います。日本の自衛隊が米軍のキャンプに入営するのです。米第5空軍の基地司令部は横田にありますが、航空自衛隊線隊司令部にそこへ入ってこいと言う。さらには「航空自衛隊はクウェートからバグダッドに物資を運んでくれ、国連の人道支援というのがあるじゃないか。あれに目をつけろ」。日本は「はい分かりました」と言う。こうして「国連の人道支援」が始まりました。どうもこの航空自衛隊のやっていることが怪しいと感じ、とある市民団体が開示請求をしました。「航空自衛隊はクウェートからバグダッドまで一体何を運んでいるのか」。出てきた文書は全て真っ黒で、何一つ分かりません。その後2009年に民主党政権ができます。当初、民主党は「情報公開の鬼」のような顔をしていましたから沖縄密約の徹底解明を進めます。そこで再度開示請求をすると、こんどは文書の内容が全部出てきた。7割が武装米兵の運搬でした。要するに航空自衛隊はイラク戦争に加担していたのです。名古屋高等裁判所はそれを受けて、航空自衛隊のこの活動が憲法違反であるとの判決を下しました。


日米構造と機密情報

一事が万事そんな調子で、日本の安保体制の変質には沖縄が全部関連しています。60年の安保なんて今の安保とは全然違いますよ。当時極東というのはフィリピン以北でした。今は周辺事態法があるから事前協議なしでどこにでも出られる。そのような「構造」が問題なのです。

2000年には、琉球大学の我部政明教授が開示請求を行い、アメリカの国立公文書館から莫大な数の機密文書を持ち帰りました。クリントン政権下で決定的な情報公開法の改正がされて、25年も経てばほとんどの文書が開示されるようになりました。すると文書が全部出てくるわけですね。朝日新聞と我部教授が共同作業でこれを天下に公表しました。これによって初めて、この文書が公に出たのです。98年にも少し出されましたが、毎日新聞が追いかけて報道したくらいで、この重大な機密開示情報をその他の報道機関は一切報道しません。世界でも例のない国だと思います。(次号に続く)

〈講演会録〉戦後日本のなかの沖縄―日米安保・密約とメディア 後編(2012.10.01)

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