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京大病院 院内感染で患者死亡 肝移植手術見合わせ

2012.09.16

京都大医学部附属病院(京都市左京区)は9月4日、肝胆萃・移植外科に入院していた女性患者3人が多剤耐性緑膿菌に感染し、そのうち1人が死亡したと発表した。同病院は感染拡大を防ぐため、成人(15歳以上)の肝移植手術を見合わせている。同病院によると、死亡した女性は5月に同科に入院し、6月中旬に受けた生体肝移植手術直後の検査で、多剤耐性緑膿菌に感染している事が判明。8月29日に同菌を原因とする肺炎を発症して死亡した。

また、8月中旬に行われた検査では同科に入院している別の女性患者1名の感染が確認された。女性は複合感染による敗血症の状態にあり、治療が続けられている。さらに、8月29日に行われた便保菌調査でも、同科の女性1名の感染が確認されたが、いまのところ感染症の発症はないという。

同病院は3人がいずれも同一株の菌に感染していること、死亡した患者と他の感染者2名が一時期、同部屋であったことから院内感染と判断した。感染経路は不明で、院内感染対策チームを中心に対応にあたっている。同病院は8月30日に、左京保健センターに状況を報告した。

さらなる感染拡大を防ぐため、同病院は関連診療科の患者に対して便尿保菌検査を行うほか、関連病棟の環境調査を行うとしている。また、安全が確認されるまで成人の生体と脳死の肝移植手術を見送る方針で、再開の目処はまだたっていない。

同病院では04年にも同菌による院内感染が発生し、2人が死亡している。

【多剤耐性緑膿菌とは?】

多剤耐性緑膿菌とは、抗菌薬への広範な耐性を持つ緑膿菌の名称。緑膿菌は土壌、水中、植物、動物など自然環境のいたるところに生息する常在菌であるが、日常的に抗菌薬が使われる医療現場においては緑膿菌が複数の薬剤に耐性を持ち院内感染の原因菌となる。緑膿菌の病原性は低いが、移植手術後など免疫力が弱まると感染し易く、肺炎や敗血症など重篤な疾患を引き起こすこともある。特に多剤耐性緑膿菌には有効な抗菌薬がなく治癒が困難なため、近年、医療機関で問題視されている。