戦争において不殺生を唱える 第1回ブータン文化講座 仏教と戦争(2012.07.16)

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7月6日、稲盛財団記念館で「第1回ブータン文化講座」が開かれた。こころの未来研究センター・ブータン学研究室が主催し、テーマは「仏教と戦争―第4代ブータン国王の場合―」。チベット・ブータン歴史文献学を専門とする今枝由郎氏を迎えた。今枝氏は今年6月までフランス国立科学研究センターで研究主任を務めていた。

今枝氏は81年から90年にかけてブータン王立図書館の顧問として赴任。王立図書館の整備に大きな貢献をするなど、長年ブータンと深く関わってきた。近年では「ブータンに魅せられて」(2008年、岩波書店)や「ブータン仏教から見た日本仏教」(2005年、NHKブックス)などの著作がある他、訳書でも「幸福大国ブータン―王妃が語る桃源郷の素顔」(2007年、NHK出版)などがある。

記念すべき第1回のテーマは「戦争」。世界で最も幸福度が高いと言われるブータンであるが、国民総幸福を唱えた第4代国王の治世は決して平坦ではなく、政治的な危機の連続だったという。今枝氏はそれらの危機に対する施策を紹介することで、ブータンの根底にある仏教思想を論じた。

今枝氏は講演の前半では80年代中頃までのチベット人問題、90年代前半のネパール難民問題を、後半では2003年のインド・アッサム独立派ゲリラとの軍事衝突を取り上げた。特に後者については当事国や第三国の、あるいは国王の周囲の個人的な記録を参照しながら、国王が武力行使に当てってもあくまで不殺生を第一として、捕虜を自国の兵士と同様に扱い、戦死したゲリラ兵もブータン兵も区別なく追悼の祈りを捧げたことなどを語った。

今枝氏によると、ゲリラに対する武力行使直前の訓示において、中央僧院の僧侶が「敵も自分たちと同じであり、仏教徒として殺人が許されるとは思ってはならない」と語ったという。ブータンにはこのように、厳格な不殺生を始めとして仏教の教えが深く根付いているとし、第二次世界大戦時の日本との明らかな差異を指摘した。

そして国民総幸福論についても、その根底に仏教の教えがあり、国王はそれに忠実だったのではないかと考察し、今枝氏は講演を終えた。

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