文化

起業を「かたち」にしよう 製品開発・起業サークルTPEC始動

2012.07.16

7月4日、京都大学旧ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー(本部構内)において、製品開発・起業系サークルであるTPECがビジネスプランコンテストを行った。この記事ではコンテストの様子や、TPECに関して聞いた話をお伝えする。(P)

ビジネスプランコンテストは、3人一組の6チームが、5分間のプレゼンテーションと10分間の質疑応答でビジネスアイデアを競い合うものである。全参加者がTPECのメンバーであり、審査員は起業経験のある学生や経営系の大学院生など6名で構成された。

ビジネスプランの多くは、製品化されていない技術(seeds、シーズ)を用いて作られている。シーズを用いたプランは、大豆以外の豆で納豆を作り販売するといったものから、バイオエタノール自動車の製造のコストを削減し、普及を目指すといった大胆なものまで様々である。

それぞれのプランに対して審査員は「既存の製品に対して優位性がないのではないか」「ネットなどで調べるだけでなく、自分の目や耳でニーズを調べるべきだ」といった厳しい評価をする場面も多くあった。TPEC代表で医学部医学科3回生の藤本大士さんは「第一回のビジネスプランコンテストということで、プランの質も未知数だったので、今回は学生の方に審査員をしてもらった」と話す。今後は、今回のコンテストを含めてさらにビジネスプランのクオリティを挙げたうえで、社会人の審査員を呼ぶことを検討しているという。

TPECは京大生約30名からなり、今年の2月に結成された新しいサークルである。瀧本哲史客員教授の全学共通科目「起業と事業創造」のOBを中心に結成された。この講義は少人数のチームを組んで詳細なビジネスプランを組むというものであり、この講義と同じようなことをサークルでもやろうとしてTPECが結成されたという。

活動は週に一度の勉強会のほか、少人数ごとのプロジェクトで構成されている。プロジェクトは主に2種類のものに分かれている。一つ目は、学生自らのアイデアをもとにビジネスプランを作成し、実際に企業に持ちかけるといったものである。二つ目は、実際に企業シーズや課題解決をテーマにビジネスプランを考えるというものである。例えば、伝統工芸である蒔絵の職人から、伝統工芸の存続のための斬新なアイデアを求められ、TPECのメンバーと関係者が一緒になってプロジェクトチームを作っている。

このサークルの活動で重要なことは、学生の中で自己完結しないことだと藤本さんは話す。TPECでは、中小企業の工場を見に行ったり、企業にプロジェクトを持ち寄ったりすることが京都大学の産学連携の研究員の協力によって可能になっている。今回のコンテストで優勝したバイオエタノール自動車の普及を目指すチームも、実際に官僚や関連企業の人に会いながら、さらにプランを磨き上げていくという。

TPEC副代表で経済学部2回生の北口智基さんは「ビジネスに興味があってもそれを生かす場がない人に来てほしい」と話す。藤本さんは現在、新しく入った人でも実際にプロジェクトに関わりながらビジネスについて学んでいくなど、教育のシステムを考案しているところだという。

TPECは毎週水曜日の午後6時30分から、京大の旧ベンチャー・ビジネス・ラボラトリーで活動している。詳細はTPECのHP(http://technoplat.jimdo.com/)を参照されたい。

【記者の視点】

学生だけでビジネスプランを立てたり、起業をしようとしたりしても、どうしても現実のビジネスとは離れたものになってしまいがちである。実際に、今回のビジネスプランコンテストは準備期間が3週間と短かったことによる準備不足のためか、「このようなサービスがあっても使わないもでは」と思ってしまうことや、「市場規模数千億円」という試算に現実味のなさを感じることがあった。

審査員の中に、シーズを用いたプランでビジネスプランの世界大会のファイナリストになり、会社を立ち上げるのに携わったものの、実現段階で様々な技術障壁がありうまくいかなかったと話す方もいた。
こうした様々な難点を解消するためにこそ、社会人の方々と実際に会って、あるいは目や耳でニーズを確認することで、ビジネスプランを磨き上げ、実現に近づけることが重視される。こうした機会はなかなか他の場所では得られない。他のサークルとは一味違うTPECの取り組みが、もっと広がっていくことを期待する。