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薬・元教授に捜査 研究費 私的流用か

2012.07.16

京都大学大学院薬学研究科の元教授が6月28日に辞職していたことが分かった。辞職の理由は「一身上の都合」であるという。京大によると、元教授は5月に東京地検特捜部から捜査されていた。

報道によると、元教授への調査は業務上横領容疑によるものである。元教授は、物品が納入されていないにもかかわらず代金を支払い、その支払った現金を業者に管理させるという「預け金」と呼ばれる方法で不正な会計を行ったという。

元教授はゲノム(遺伝子)情報をもとに、ITや医学的知識を利用して薬を開発する研究を行っていた。02年に京大に着任し、10年3月に新たに創設された「最先端創薬研究センター」のセンター長となった。12年2月20日付けの科学雑誌「ネイチャー」電子版には、肥満のリスクと遺伝子欠損の関連や特定タンパク質が肥満防止の働きをするメカニズムについての研究成果を発表している。

なお、文部科学省は07年2月に研究費の不正使用を防止するための「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン」を作成していた。しかし、その後も預け金などの不正経理が行われたために、08年から11年にかけて不正経理に関わる調査を行っていた。

京大では、「国立大学法人京都大学における競争的資金等の適正管理に関する規程」を07年に定め、また「不正防止計画推進室」を設置し、様々な研究費の不正使用の防止策を展開していくこととしている。08年4月には、研究推進課に、不正防止計画案の作成、競争的資金等の運営管理の実態把握、研究室等の現場の処理の実態把握等の実務を行う部署「研究経理企画調査室」を設置している。
ただ、国立大学の会計システムが硬直的なこともあり、柔軟に研究活動を行うための資金のプールは広範囲で行われていたとされる。今回の事件はそうした会計上の処理だけではなく研究資金の私的な流用が疑われており、近年の「不正」な事件とは文脈が異なる。

なお、この件に関して総務課人事部は「辞職願を規定に基づいて処理しただけであり、どのような事情があったかは把握していない」とコメントした。また広報課は、「この件の具体的な経緯については調査中でありコメントできない」として、また各社の報道については「正式に公表した情報によるものではない」と述べた。